都民のニーズ等の解決に資する画期的な金融商品・サービスの開発・提供を行う金融事業者らを表彰する「東京金融賞2019(金融イノベーション部門)」で3位を受賞するなど、注目を集めている「お金の健康診断」。 ロボアドバイザー「THEO(テオ)」を運営する「株式会社お金のデザイン」の子会社「株式会社400F」がサービスを提供している。
質問に答えるだけでお金に関する診断ができ、保険や投資、貯金などお金に関する悩みや不安を無料かつ手軽に金融のプロに相談できるサービスだ。
お金についての不安や悩みを抱えている人は多いが、「誰に相談したらいいか分からない」「お金に関するこんなことを話していいのか」等の理由で、FP(フィナンシャルプランナー)などに相談する人はそれほど多くはない。
同社CEO中村仁(なかむら じん)氏は、「『お金の相談をしたいのだが、機会がない・ハードルが高い』という社会的な課題があるのではないかと思い、サービス立ち上げに至りました」と話す。
中村仁氏に、サービスの特徴や利点、実際の利用方法などについて、お話を伺った。
無料かつ手軽に、お金の悩みや不安を金融のプロに相談できるサービス
―まずサービスの概要について教えてください。
中村仁さん(以下敬称略):オンライン上でいくつかの質問に答えていただくだけで、ユーザーの家計や保険、資産の状況などを診断します。
その結果を元にして、お金に関する不安や疑問点などを無料でFPなどの金融の専門家にチャットで相談できるサービスで、お金について何でも相談可能なプラットフォームです。
「いくら貯金をすればいいか分からない」「自分の今の家計状況は良いのか悪いのか」「老後までに2000万確保できないが、どうしたらいい?」などお金の悩みや不安を解決してもらいたいと思っています。
―サービスを立ち上げようと思われたきっかけは?
中村:2017年に「株式会社お金のデザイン」のロボアドバイザー「THEO(テオ)」のマーケティング施策として行った「お金の健康診断」というイベントがきっかけでした。
複数社の従業員や街中で歩いている人に、iPadでお金の状況について入力してもらい、それをもとにFPがアドバイスをするというものです。
このイベントが想像以上に好評いただき、満足度はなんと100%。
「お金の相談をしたいが、機会がない・ハードルが高い」という社会的な課題があるのではないかと考え、サービス立ち上げに至りました。
―利用者はどのくらいいらっしゃいますか?
中村:2018年11月に立ち上げ、利用者は一年で40倍ほどになり、月間では数十万PVあります。
金融のプロの方々(プランナー)は、公開から一年で100倍ほどになり、数百人にご登録を頂いています。地域金融機関や証券会社などの登録も増えてきました。
―どのようなユーザーが利用されていますか?
中村:25~44歳が最も多く、45~54歳の方が次いで多いです。
世帯年収で言えば、600~700万円の方が最も多いですが、世帯年収が2000万円以上の方からも相談が多いです。「中立的な立場でアドバイスをもらいたい」「良い専門家と出会いたい」といったニーズから、そうした高年収の方も利用をいただけています。
―どんな相談が多いですか?
中村:家計に関することや保険の見直し、投資の相談が多いですが、定年退職や老後の資金についての相談も増えてきています。
資産形成や保険などにとどまらず、「借金返済」「債務整理」についての相談が来ているケースも多く、想定していた以上に様々な種類の相談が来ている状況です。
20問の質問に答えるだけで、お金に関する「診断」が可能
―具体的にサービスについて伺わせてください。
中村:まず、20問の質問に答えていただきます。
具体的な質問内容は、性別や住所、年収や月々の保険料、月々の貯金額…といったものです。
―答えました。すぐに診断結果が出るんですね。
中村:そうです。質問に答えていただくと、すぐに診断結果が出ます。
まず出るのが、「あなたがどんなタイプか」です。
―当たっていますね…。株価が下がればすぐ買うタイプです。
中村:結構、的を射ていると思っています。
その後、回答いただいた内容から年収や年間貯金、投資額、家賃、保険という5つの項目について環境が近い人(同地域に住む同世代)の平均値と比較した結果を表示します。
A~Eの5段階評価で、平均値よりも良ければA、悪ければEという結果です。
―これなら自分が今どこの立ち位置なのかすぐ分かりますね。
中村:あえて偏差値のようにしているのは、自分が他人と比較してどうなのかを知ってもらいたいと思っています。
我々が偏差値や猫を使っているのは、「金融事業者の正論をかざすのではなく、利用者の方に分かりやすく理解してもらいたい」と思っているからです。
例えば、平均値と比較して「年収は平均値だが、貯蓄はあまり出来ていないし資産運用は全くしていない。家賃は少し高すぎるのではないか?」まで理解が出来た方が計画を立てやすいですよね。
―確かにそうですね。診断結果を見終わったら、すぐお金に関するプロに相談できるようになっているんですね。
中村:独自のアルゴリズムを使用して、それぞれの方に最適なプロに相談が可能です。
答えていただいたデータはプロにも共有される仕組みなので、ご自身にとって最適なアドバイスをすぐ受けられます。
登録しているのは、FP、証券のプロであるIFA(独立系フィナンシャル・アドバイザー)、弁護士など幅広い方が登録しています。
「検索」ではなく「出会い」によって、お金の悩みや不安を解消したい
―今後の展望や目標について教えてください。
中村:お金に悩んだ時に見てもらえるようなサイトにしていくつもりです。
現代では情報は溢れかえっていて、「自分が今見ている情報が正しいのかどうか」が分からない時代に入ってしまっています。
お金で悩んだ時に、気軽に相談してもらいプロがきちんと対応してくれる、といった形にしていきたいと思っています。「検索」ではなく「出会い」によって、モヤモヤしているお金の悩みや不安を解決できるようにしていきたいです。
新機能のローンチも色々と考えています。
例えば、現在はチャットでしか相談ができませんが、3月からはビデオ通話ができるようになります。
―「日本人はお金について話す文化が無い」と言われることもあります
中村:私が思うに、お金について話したくないわけではないのだと思います。
弊社のサービスを運営する中で、「誰かに言いたい」「誰かに聞いて欲しい」という思いが強い人は非常に多いと感じています。
チャットでも非常に盛り上がっていますし、「こんなことも相談できたのか」と言われる方もいます。
―私自身もそうですが、「相談したい」と思う一方で、「どこに相談したらいいか分からない」と思うことがあります。
中村:そう思われている方はたくさんいらっしゃいます。
問題の根本にあるのは、「相談したくても相談できる環境が整っていないからだ」と個人的には考えています。
全国各地に様々な金融機関はあり、投資信託や保険には、様々な種類の商品が登場していますが、投資をするなど実際のアクションを起こしている人は2割程度にとどまります。
残りの8割の人は、「不安だ」と言いながらも何もアクションを起こしていません。
「こんな相談していいのか」「相談する時間がない」「知らない人に相談するのは気が引ける」「金融機関は信用できない」など、様々な障害が存在しているからでしょう。
こうした障害を取り除いて、金融サービスが行き届いていないことを解決しなければ、本質的に変わりません。
どれだけテクノロジーが発展しようと、どんなに良い金融商品が登場しようと、相談できる環境を整えていかなければ、金融サービスは広がっていかないと考えています。
「テクノロジー」と「人」、どちらかだけを重視する、もしくは信用しすぎるのはよくありません。
テクノロジーと人の融合が世の中を変えていくはずと信じて、今後も活動していきます。