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お金、想いという価値移動をスムーズに~『Kyash』が目指す世界

お金、想いという価値移動をスムーズに~『Kyash』が目指す世界

皆さんは「Kyash」というサービスをご存知でしょうか。

2017年4月のアプリリリース当時、「送金アプリ」として話題となったアプリです。現在はウォレットアプリに衣替えし、Kyash Cardの場合、決済金額の1%*をKyashポイントとして還元しています。
*一部対象外取引があります。

ポイントの“二重取り”ができる決済サービスとして大変人気です。

近年はQRコード決済をはじめ、様々なキャッシュレスサービスがあるなかでも、独自の路線でファンを獲得しています。今回は株式会社Kyashの事業開発の中澤望さんにお話しを伺いました。

Kyashはスムーズにお金(想い)を届けるためのサービス

Kyashはスムーズにお金(想い)を届けるためのサービス

–まずは、Kyashのこれまでの歩みを教えてください。

Kyashが設立されたのは2015年1月、現在の(2020年4月現在)資本金は約74億3千万円。特徴的なのは三井住友銀行、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルなど3つのメガバンク系から出資を受けていることです。また、海外投資家からも出資を受けています。

米国や欧州にはMonzo、N26、Chimeといった、今まさに急成長しているモバイルバンキングサービスがあります。2020年3月の資金調達の際に参画した海外投資家の中には、前述のモバイルバンキングサービスに投資実績がある投資家もいます。日本にはまだモバイルバンクが存在せず、今後Kyashがそのように成長していくことを期待していただいています。

会社設立から約2年後の2017年4月にアプリをローンチ、18年6月にリアルカードを発行し、多くの方に知っていただくきっかけになりました。

直近では2月にKyash Cardの申し込みを開始し、4月にはApple Payへの対応を始めるなど、サービスは順調に機能をアップグレードしています。

iOS の画像
※Apple Pay対応でQUICPay+として利用可能

–会社設立からアプリのリリースまで2年かかっているのはなぜでしょうか。

決済処理システムの開発が理由です。独自の決済処理システムを弊社のようなスタートアップ起業が開発することは非常に珍しく、それによってサービス設計を柔軟に行うことができ、他社にはない強みです。

–Kyashの誕生にはどういった背景があったのでしょうか。

弊社代表の鷹取は三井住友銀行で5年間勤務したのち、米国系の戦略コンサルティングファームを経て2015年1月にKyashを立ち上げました。

起業に影響を与えた出来事は大きく2つあります。
1つめは、母親の実家がお寿司屋さんを営んでいるのを見ていて、自分もサービスの提供者側になりたいという思いがもともとあったことです。

2つめは銀行員時代に経験した2011年3月11日の東北大震災です。
震災の義援金を送る手続きは非常に煩雑で、既存金融システムの課題を感じました。

例えば10円送るにも、自分の口座番号を入力して、相手の銀行口座番号を入力して、手数料をかけて送金する。時間によっては翌営業日に着金でリアルタイム性もない。

そういった手続きが煩雑であるが故に、届かない想いがあることをまざまざと感じ、思いのままスムーズにお金を送れる仕組みがあれば、人の想いが届き、それによって人々の生活が豊かになるのではないかと思ったのが誕生の背景となっています。

–Kyashの特徴はどういったところにあるのでしょうか。

カード発行とプロセシングという決済処理、そしてアプリケーション開発を全て社内でやっていることですね。

通常、イシュイング(カード発行)や決済処理はそれぞれ別の会社が担っているのですが、Kyashはそれらを一気通貫で提供しているのが特徴です。そのため、Kyashはユーザーのニーズに応えられる柔軟なサービス設計が可能になります。

–ネーミングに込められた想いを教えてください。

「Cash」と同様に普遍的な存在となる、次世代のお金という意味を込めて「Kyash」です。「Ky」にすることで世界各国どこでも「キャッシュ」と呼んでもらえます。

–ちなみに、ロゴはどういった意味がありますか?

Kyashロゴ

「K」はお札とカードとコインから成り立っています。色んなお金を包含しているという意味があります。

–へー、気付かなかったです。基調色が青なのは何故ですか?

清潔感と爽やかさ、多くの方に受け入れていただける色という観点からです。また、若々しさだったり、エネルギーも感じられる色なので。

–Kyashが世の中に与える影響、社会的意義は何でしょうか。

お金は人びとの価値観や想いが詰まったものだと捉えています。先述した震災時の寄付も、被災した方を助けたいという想いがありますよね。その他にも感謝だったり応援という気持ちを乗せて相手に送ることができると考えています。

価値観や想いをスムーズに届けるのは、既存の金融システムでは難しいのが現実です。
Kyashはお店や人びと、そしてさまざまな対象にお金を自由に届けらる新しい仕組みを構築して、提供することが意義かなと思います。

高還元率を実現できるのは独自のプロセシングがあるから

高還元率を実現できるのは独自のプロセシングがあるから

–それでは、具体的に「Kyash」のサービスについて教えてください。

「Kyash」はクレジットカードまたはデビットカードをリンク(登録)すると、使えるKyash Visaカードを提供しています。

Visa加盟店でもちろんご利用いただけますし、Apple PayやGoogle Payに対応しているのでQUICPay+加盟店でもご利用いただけます。

カードでも、スマホのみでも決済いただけるサービスです。

また、1ヶ月あたり、1回あたりの利用限度額も自分で設定でき、スマホ上でカードロックもできるので、使いすぎを防いで安心に使えます。

決済や送金すると、プッシュ通知が送られてきて、即座に履歴に反映されるのも特徴です。

Kyash Visaカードには3種類のカードがあります。

「Kyash Card(キャッシュカード)」「Kyash Card Lite(キャッシュカードライト)」「Kyash Card Virtual(キャッシュカードバーチャル)」。

Kyash Cardは、1ヶ月あたりの利用限度額100万円、1回あたりの利用限度額は30万円です。ICチップとVisaのタッチ決済を搭載したシンプルなデザインのカードです。

発行手数料は900円かかりますが、還元率は1%で一番人気が高いです

Kyash Card Liteは1ヶ月あたりの利用限度額が12万円、還元率が0.5%ですが、Kyash Cardよりも簡単にリアルカードが発行できます

3つ目のKyash Card Virtualは名前とメールアドレス、電話番号を入力するだけでアプリ上にVisaカードを発行することができ、その時間約1分という誰でもすぐに作れるカードです。こちらもApple Pay、Google Payに対応しているので、実店舗でも利用はできます。

— Kyash Cardが一番人気なんですね。

そうですね。スペックもそうですが、Kyash Card Liteよりも券面のデザインが大人っぽい、格好いいというので支持されています。

Kyash Cardのラインナップ3色
※Kyash Cardのラインナップ3色

VISAのタッチ決済が付いてるのも魅力ですね。最近はICチップがないと使えないお店も増えているので、使える範囲はKyash Card LiteよりKyash Cardの方が広いです。

ちなみに、色は3色ありますが一番人気はネイビーです。

–表面にカード番号がなくて、次世代のカードという感じですね。

そうですね。デザイン的な意味もありますが、セキュリティにも配慮しました。
昨今SNSでカードを取り上げていただくことが多いのですが、表面にカード番号があると不正利用を防ぐためにマスキングして隠さないといけませんよね。表面にカード番号が表示されていなければ、その必要はありません。

–アプリのローンチから約1年後にリアルカードが出されていますが、同時に出さなかったのはなぜですか?

Kyashは元々送金がメインで、決済もスマホで完結することを目的としていました。ただ当時はスマホで決済することは一般的ではなく、世間に認識していただくことに苦戦しました。

そのため決済をサービスの中心に据えて、多くの方に馴染みのあるカード決済からアプローチすべくリアルカードを出すことにしました。実際、多くの方に使ってもらえるようになりました。

–Kyashの魅力といえば、決済の1%がポイントとして還元されることも、その一つだと思います。ここまでお得なサービスを実現できるのは何故でしょうか。

さきほどお話しした、カード発行とプロセシング(決済処理)、アプリ開発を自社開発していることも一つの理由です。

内製化することで外部委託費用を削減でき、その分をポイント還元に充ててることができます。

–当初還元率は2%でしたね。1%になったのはなぜでしょうか。

実は1%になったときに、ポイントを受け取るタイミングも変わっています。
還元率が2%のときは当月末までの利用分を翌月末に残高に付与していました。それだと場合によっては、利用してからキャッシュバックまで約2ヶ月かかることもあります。

残高にそのまま付与しているので、貯まっている実感がありません。そのため、還元率は1%にし、決済が確定したらすぐポイントが付くようにしました。

–なるほどですね。Kyashはアプリの使いやすさも評判が良いです。その辺りはどういったこだわりがあるのでしょうか。

そうですね。なるべく直感的にシンプルにお使いいただけることを意識しています。エンジニアだけでなく、デザイナーも社内に在籍しているので、ユーザーのニーズに沿ったきめ細かい対応ができる体制があります。

本当に良いものをユーザーに提供できるような体制をしいています。

本当に良いものをユーザーに提供できるように心掛けています

–決済以外にも様々な機能があると思いますが、いくつか教えてください。

まず、カードロック機能があります。例えば、カードを失くしてしまったときもアプリを操作して簡単に利用停止にできます。

Kyashアプリ画面
※Kyashアプリ画面

あとは、プッシュ通知ですね。Kyashで決済するとすぐにプッシュ通知が飛んできます。利用履歴に反映されます。クレジットカードだと、利用明細への反映に10日とか2週間くらいのタイムラグがあることが多いのでそこも強みです。

–クレジットカードをはじめ、現在はQRコード決済が乱立していますが、ライバルとして意識しているサービスはあるのでしょうか?

難しいですね。決済系でもQRコード決済とは少し違いますし。海外のMonzoやN26のようなモバイルバンキングの動きは参考にしています。

価値移動のインフラを作っていきたい

価値移動のインフラを作っていきたい

–Kyashが目指すところはどういったところになるのでしょうか。

今は決済と送金がメインですが、給与受け取りや現金引き出し、色んな機能を兼ね備えていきたいなと思っています。先ほど紹介したMonzoでは、すでに金融に関するあらゆることがサービスのなかでできます。

私たちも決済だけではなく、周辺のサービスも強くしていて「総合金融」サービスを提供し、ゆくゆくは価値移動のインフラを作っていきたいです。

–直近で注力されていることはなんでしょうか。

チャージ手段をもっと増やしていきたいです。報酬受け取りの話がありましたが、給与、CtoCサイトの報酬、売上金などあらゆるお金をKyashで受け取れるような、よりお財布に近い存在になっていけるようにしたいです。

そのためにも今はもっとリアルタイム性を追求し、便利な機能を追加することに取り組んでいます。

–ユーザーは若い方が多いということでしたが、年齢層はどれくらいでしょうか。

20、30代が全体約7割程度を占めています。

–今後はもっと上の世代も取り込んでいきたい?

それもありますが、まずは「ミレニアル層」の方々にサービスを届けていきたいと考えています。まだまだ潜在ユーザーはいますから。

–最後に、まだKyashを使っていない方々にメッセージをお願いします。

本当に1分あればアカウントは作れます。まずはアカウントを作ってみて、試しに使っていただければ、すぐに便利なことは分かってもらえると思います。まずぜひダウンロードしてください!

–ありがとうございました。

Kyashロゴ