HOME  金融サービス調査隊【LINE Payの挑戦】あえて今、クレジットカード事業に進出する理由

金融サービス調査隊
【LINE Payの挑戦】あえて今、クレジットカード事業に進出する理由

【LINE Payの挑戦】あえて今、クレジットカード事業に進出する理由

2014年12月にサービスローンチし、2020年で6年目を迎えたLINE Pay。

キャッシュレス事業者は、2018年頃から巨額な費用をつぎ込んだ大規模な還元キャンペーンを行うなど各社がしのぎを削り合い、政府のキャッシュレス還元なども行われた。

その結果、消費者の間で、急速にキャッシュレスの認知や利用が拡大している。

しかし、2020年に入るとそうした大規模還元キャンペーンもひと段落し、各社は次の手を打ち始めている。

特徴的なのはLINE Payだ。圧倒的なユーザー数を誇るコミュニケーションツールLINEを母体とした決済サービスLINE Payは、「Visa LINE Payクレジットカード」というクレジットカードの発行を始めた。

QRコード決済を主体としたスマートフォン決済が盛り上がりを見せるなか、なぜ今クレジットカード事業に参入したのだろうか?

同社のBusiness Development1チームの佐野真人マネージャー、広報の上岡真由さんにお話を伺った。

シニア層にもLINE Payが浸透し、クレカをフックにしたキャッシュレス戦略を推進

―ローンチから6年目を迎えました。これまでの活動を振り返ってみると、どんな6年でしたか?

上岡さん:国内のスマホ決済事業者のなかでは歴史あるサービスとなってきました。順調にユーザーも加盟店も拡大してきたと考えています。

当初は加盟店を開拓するにも少人数だったこともあり大変なマンパワーが必要でした。

しかし、2016年に開始したJCB加盟店で利用できる「LINE Pay カード」は、高還元でクレジットカードが持てない若年層でも利用でき、LINEで通知も受けられる便利さとLINEらしさで好評となり、さらに、2017年に実施した『LINEのグリーンウィーク』という初めて大々的に行ったキャンペーンで、登録者を大幅に増やすことができ、右肩上がりで成長していきました。

2017年末には国内数か所に営業拠点を抱える子会社との合併をおこない、加盟店の拡大も順調に進み、スマホ決済可能箇所は100万箇所を達成。

2019年頃からは、ユーザーや店舗の拡大だけでなく、幅広い業種とのアライアンスを加速させ、様々な場所で支払いが行えるような環境整備を行っています。

―順調にユーザーと加盟店を伸ばしているなかで、なぜクレジットカード事業に参入したのでしょうか?

佐野さん:LINE PayはLINE上で展開しているのと、事前チャージ式で審査の必要がなく利用可能となるため、学生をはじめ若年層に多く利用いただいているのが特徴でした。

しかし最近では、会社員やシニア層含めて幅広い世代にお使いいただけるようになってきており、日常的にクレジットカードを利用している方も多く、「チャージするのが手間である、クレジットカードを使って決済できるようにしてほしい」との要望が多々寄せられ、そうしたニーズに応えるためにクレジットカード事業の参入に至りました。

また、ニーズに応えるだけでなく新たなユーザー層の開拓という面もあります。これまでポイント還元をはじめ様々なキャンペーンやプロモーションを行ってきたので、どのようなキャンペーンを行うとどのような方に興味をもっていただけるのかといった検証はできていました。今回のクレジットカードはこれまでとは違った新しい層にもLINE Payを知っていただき、ご利用いただくきっかけとなるという意味で、今後の弊社事業の中核になっていくものだと考えています。

―なぜ、クレジットカードが中核になるとお考えなのでしょうか。

佐野さん:クレジットカードは、従前より使われてきた決済手段で、多くの利用者がいます。また最近ではVisaが非接触決済であるVisaタッチを日本で積極的に推進するなど、注目も集めていますし、モバイル決済との親和性が高くなってきています。

LINEはコミュニケーションツールのプラットフォームとしての強みがあり、すでに世界規模のネットワークを持つクレジットカードと組み合わせることで、ユーザーに対して新しい決済体験を提供できると考えています。

スマホ決済やプリペイドの「LINE Payカード」と同様に、「Visa LINE Payクレジットカードを利用したらLINEに利用通知が届くサービスの準備を進めているところで、今夏に提供する予定です。今後もこうした新しいサービスをどんどん追加していき、新しいモバイル決済を体験してもらいたいと考えております。

―ユーザーニーズに応えるために参入したクレジットカード事業ですが、マーケティングとしても良い影響はあるのでしょうか?

佐野さん:良い影響が出ると予想しています。

今後もモバイルファーストを変えることはありませんが、日本ではまだまだキャッシュレス決済としてクレジットカードを使う方が圧倒的に多いです。

今回のVisa LINE Payクレジットカードをフックにして、LINE Payを日常の決済方法として使う、新たなユーザー層を獲得していきます。

それが実現できれば、マーケティング施策として成功だと考えています。

「Visa LINE Payクレジットカード」の特徴は、高還元率と次世代機能?魅力に迫る

「Visa LINE Payクレジットカード」の特徴は、高還元率と次世代機能?魅力に迫る

※申込み開始したBLUE/REDのほか、今後提供開始予定のWHITE、GREEN、YELLOW。実際にはすべてのカードにチップが搭載される※

―「Visa LINE Payクレジットカード」にはどんな魅力があるのでしょうか?

佐野さん:魅力としては大きく3つです。

1点目は初年度の還元率が3%であることです。これほど還元率が高いクレジットカードは他にありません。税金や保険料の支払い含めて、幅広い支払いが還元の対象となっています。

2点目はLINE Payとこのクレジットカードを紐づけることで、事前にチャージする手間がなく、LINE Payでの利用が可能となります。

3点目は、Visaのタッチ決済に対応していることです。大手のコンビニを始めとして、Visaのタッチ決済が急速に広まっており、今後さらに加速していくと考えています。

次世代のクレジットカードとして高機能であるかつ、LINEというプラットフォームを連携することでこれまでにないクレジットカードでの決済体験を提供できると考えています。

実は、このカードはLINE Payだけではなく、クレジットカードに紐づけて決済ができる他のスマホ決済サービスに紐づけても利用でき、3%還元が適用されます。LINE Payで使用いただくのが一番良いのですが、他の決済サービスでも使用いただけることも、このカードを発行いただくメリットです。

―クレジットカードの還元率は高くても通常1%程度。なぜ、高還元率が実現できたのですか?

佐野さん:詳しくはお答えできませんが、弊社が様々な会社と提携関係にあるのが大きいですね。

―デザインは非常にシンプルで、こだわりを感じます。

佐野さん:デザインにはこだわり、シンプルさを追求しました。

表裏ともにマットな質感で、表面にカード番号がなく、全ての情報を裏面に集約しています。「どれだけシンプルにできるか」、その1点にこだわりました。

カードのバージョンとしては、東京五輪のエンブレムが入ったREDとBLUEをご用意しています。

また、2020年7月13日からBLACKの申込み開始、8月以降から、WHITE、GREEN、YELLOWも増える予定です。

東京五輪のエンブレムが入ったREDとBLUEのデザインパターン
(東京五輪のエンブレムが入ったREDとBLUEのデザインパターン)
(YELLOW、WHITE、BLACK、GREENのデザインパターン。マットな質感で高級感があるデザイン。プレミアムな印象で期待するユーザーが多いというBLACKは、2020年7月13日から申し込みが始まる)

―この中で人気の色はありますか?

佐野さん:現在、発行されているなかだと東京五輪のエンブレムが入ったBLUEが人気です。

2020年7月13日には、BLACKの申し込みが始まりますが、ユーザーからの反響が大変大きく、人気が予想されます。その他のカラーについては8月以降順次申し込みが始まる予定です。

―申込状況や反響はいかがでしょうか。

佐野さん:我々が想像していた以上の申し込みがあります。

カード会社さんがビックリするほどで、(主にLINE内のみでの告知状況を鑑みると)「これほどの数は経験したことがない」と聞いています。これほど申し込みをいただけて非常にうれしく思っています。

「LINEの金融サービスにも興味を持ち、使っていただくきっかけを作ることが我々の目指している姿」

「LINEの金融サービスにも興味を持ち、使っていただくきっかけを作ることが我々の目指している姿」

―「日本のキャッシュレス化は遅れている」と言われることがあります。事業者の立場として、どうお考えでしょうか。

佐野さん:実際、遅れていると思います。

コンビニやスーパーで、目の前に決済事業者が実施しているキャンペーンの広告があったとしても、利用している人はまだまだ少なく、現金で支払っているのをよく目にします。キャッシュレスにするきっかけや必要がないのでしょう。

弊社では、「請求書支払い」など他社に先駆けて便利な機能を多く提供しており、利用数は伸び続けています。

これらのサービスがあることで、現金派だった方がキャッシュレス派へと変わっていくきっかけとなり、その流れは今後も加速していくはずです。

―「LINE Pay請求書支払い」はどのようなところが便利なのでしょうか。

佐野さん:電気、ガス、水道、NHKなどの公共料金や固定資産税、自動車税などの税金の支払票が届いたときに、請求書に記載されているバーコードをLINE Payのコードリーダーで読み込むだけで、その場で支払いが可能です(詳しい機能の説明はコチラ)。

わざわざコンビニなどで支払う必要がなくなり、一度使用するとコンビニでは支払いをしたくなくなるはずです。そうした声を数多くいただいています。

手続きも簡単で、5秒程度で支払いが終了しますし、LINEポイントも付くのでおすすめの機能です。ぜひ一度使ってみていただきたいです。

―LINE Payの強みはどういう部分にあると考えられますか?

佐野さん:LINEはコミュニケーションアプリとして、日常的に利用されている方が多くいらっしゃいます。

プラットフォームのなかに送金・決済機能が含まれていることは非常に大きな強みだと思っています。

多くの決済サービスが、独自のアプリを新規でダウンロードして、新たにログインIDやパスワードなどを設定する手続きが必要です。一方でLINE Payなら、規約同意のみで始めることができ、30秒で新規のセットアップが完了します。

また、店舗や企業の場合には、LINE公式アカウントをご利用いただいているので、LINE Payと連携することで、マーケティングを行うことが可能になります。企業側としても1度だけの購入ではなく、購入をきっかけにお店のファンになっていただき、継続的に購入してもらうためのコミュニケーションツールまたはマーケティングツールとしても使用いただけるのが、他の決済サービスにはない我々の強みです。

―各社がモバイル決済だけでなく、事業の幅を広げつつあります。LINE Payでも今回のクレカのように事業の幅を広げていくのでしょうか?

佐野さん:パートナー企業とのアライアンスをベースに、事業の幅を広げています。アライアンスを広げていくことにより、ユーザーがLINE Payを使える場所を増やしたり、加盟店にとっては決済を使ってくれるユーザーが増えたりするというものです。決済手段をこれ以上増やすかについては、ユーザーニーズに対応する形で検討していきます。

―より具体的にどんな未来を見ているか教えていただけますか?

佐野さん: LINE Payは、ユーザーが友だちとのお金のやりとりや日常の買い物、公共料金の支払いなど生活のすべてをLINE Payで支払いできる、“モバイルペイメントプラットフォーム“となることを目指しています。

そして、LINEの金融サービスにも興味を持ち、使っていただくきっかけを作ることが我々の目指している姿です。

LINEは日常的にアクティブに使用されているコミュニケーションツールなのが、他にはない強みです。すでに皆さまのお手元のスマホに入っていますから。

LINEとしては、メッセージ機能だけでなく漫画や音楽などエンタメコンテンツも豊富にあり、さらにフィンテック・金融領域にもサービスを拡げています。それらも含めた一つの経済圏、スーパーアプリ性の強化をする上で、お財布の役割となるLINE Payは重要な役割を担っていると考えています。

今回のクレジットカードは、LINEのメンバーシッププログラムである「LINEポイントクラブ」においても肝となるサービスで、まさにそのことを示しています。「Visa LINE Payクレジットカード」の魅力的な特典をきっかけに、LINE Payだけでなく、LINE全体で提供している様々なサービスについて、知っていただくきっかけの一つとなればと思っています。

キャッシュレス化を推進していくことは、少子高齢化が進行する日本で、様々な課題の解決につながっていくはずです。キャッシュレス化をより推進していく原動力をLINE Payが担えるよう、これからも事業を推進していきます。