株式会社justInCaseは1月末から国内初となるP2P保険「わりかん保険」の販売開始を発表しました。
今回は代表取締役 畑加寿也さまにわりかん保険の特徴や魅力、さらには未来の保険の姿についてお話を伺いました。
困っている人がいたら、その分だけみんなで負担する
―本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、「わりかん保険」についてご説明いただけますか?とってもチャーミングな商品名ですよね。
「わりかん保険」は、まず第1弾としてがん保険をリリースしました。契約後、万が一がんと診断されたら、即座に80万円の一時金が支払われるという商品です。
こういった商品はこれまでもあったんですが、今までのものよりシンプルなのが特徴です。ステージゼロや上皮内がんと呼ばれるかなり早期のがんの場合も満額の80万円が支払われます。
かなりユニークなのが、保険料の払い方です。この部分が“割り勘”になっています。
例えば、1万人のユーザーさんがいたとします。その中で1名の方が3月にがんと診断されたとします。当社はその加入者さんに一時金をお支払いします。すると翌月、残りのユーザーさんは80万÷(1万人-1人)で約80円と管理費の合計100円ちょっとを飲み会代の集金のように徴収させていただく仕組みです。
誰もがんにならなければ翌月の保険料は0円ですし、がんと診断された方が月に2人いたら、翌月の保険料は200円ちょっとという感じになります。
“シェアリングエコノミー”のように使ったら使った分だけ費用を負担する。
誰か困っている人がいたら、その分だけみんなで負担する助け合いですね。
実は中国に前例がありまして、それが「相互宝」と言います。まさに“相互”保険。
当社が日本でやろうとなったとき、加入するのは若者が多いだろうから、もう少しキャッチーなネーミングでやってみようということで「わりかん保険」にしました。
―加入者同士で助け合うということですね。
元々、保険は事前払いであっても本来は助け合いなんです。でも、なかなか実感できないじゃないですか。だから、“掛け捨て”という言葉もあると思うんですよ。
でも、「わりかん保険」なら自分の払った保険料とその使いみちが明確に紐付いているので、保険の忘れられた価値である“助け合い”という意識を取り戻せるのではないかと考えています。
良くも悪くもがんは人数がたくさんいれば誰かいつかは必ずなってしまうものなので、知らない人同士でも助け合いがこの仕組みによってできる、それがわりかん保険の価値だと思っています。
日本初の仕組みの商品でグローバルに戦う企業に
―社名の「justInCase」もまさに「いざというときのため」という意味だと思うのですが、社名の由来や会社立ち上げの経緯を教えていただけますか?
ひょんなことから新卒で保険業界に入って、15年くらい生命保険会社さんとか損害保険会社さんと一緒に商品をつくってきました。もちろん成功した商品も全然売れなかった商品もあります。
商品をつくるときは、保険の良い仕組みをつくろうと思ってやっているのに、すごく複雑だったり、あまりにも高かったりするんですね。それで、自分自身で自分の会社でやってみたらどうなるんだろうと思うようになりました。
あとはスピード感です。当社は少額短期保険ですし、ITスタートアップなので大手さんに比べてスピーディーに動けるというのがあります。
社名の由来はまさにそのままで、日本語にしたら「念のため」「いざというときのため」という意味です。英語表記にしたのは、日本発でグローバルにということを考えているので、英語圏の人が見てもなんとなく分かるというのを意識しています。
―「わりかん保険」の他にもクレジットカードの付帯保険チェッカーなどのサービスもされていると伺ったのですが、他の事業についても教えてください。
保険商品としてはこれまで3つ販売しております。スマホ修理費用保険、一日レジャー保険、わりかん保険です。比較的若い人に親和性があってWebやアプリで販売する商品を扱っています。
あとは付帯するサービスとして、クレカ付帯保険チェッカーというサービスです。クレジットカードをカメラでスキャンしていただくと画像認識でそのカードに付帯している海外旅行保険やゴルフ保険などが分かるサービスです。
―主に比較的若い人に向けたサービスを展開されていますね。わりかん保険も他の保険に比べて、若い方が多いのでしょうか?
普通のがん保険よりは若い方が多いと思います。2~30代・4~50代・60代以上と3つのグループに分けて、そのグループの中で助け合う仕組みなんですけど、それぞれ45%・45%・10%くらいの割合ですかね。
―近い年齢などの一定のグループで助け合いをする保険の仕組みをP2P(ピアツーピア)と呼ぶそうですね。
この仕組みの商品は「わりかん保険」が日本初と伺いました。
少なくとも保険業務で認められているという意味では当社が日本で一番最初だと思っています。
でも、日本には昔から町内会で結婚資金をみんなで工面し合うとかとか頼母子講とか助け合うっていう形はあったんですよね。それを明確に商品にしたのは当社が日本初です。
―海外ではすでに仕組みとしてあるのですか?
インシュアテック(編集注:インシュアランス(保険)とテクノロジー(技術)を掛け合わせた造語)先進国のドイツやフランス、アメリカでは先行して商品化されています。最近では中国ですごい勢いで拡大していますね。
本当に必要な人に保険が届く社会へ
―そんな中で「わりかん保険」の社会的意義はどんなところにあるとお考えですか?
短期的なものと長期的なものがあります。
短期的なところでは、本当に必要としている人にがん保険や医療保険を届けることです。
日本は平均年収の低い人ほど保険に入っていません。でも、もしもの時に本当にお金が必要なのはそういう方々だと思います。
そんな方々に従来の保険の半額や半額以下で保険にご加入いただけるというのが一つの意義ですね。
もう一つ、長期的には社会保険を補う私的な保険になるのではないかということです。
日本の社会保障制度が長期的に見て破滅するというのは、おそらく識者の方々のコンセンサスだと思います。そうなった時に、公的な保障を私的な保険でカバーする時代が来るかもしれません。
その時に、「わりかん保険」のようなみんなで助け合うという仕組みがベースとなればよいなという想い、野望があります。
―インシュアテックの今後やわりかん保険の展望をお聞かせください。
インシュアテックはインシュテックと読む流派もいて、まだ一般語にはなっていません。その時点で消費者にも届いていないと思っています。
だから、インシュアテックという言葉だけでなく新たな保険の形が、消費者に広まるよう頑張っていきたいです。
また、わりかん保険は現在対応しているのはがんだけですが、それ以外の分野にも広げていけたらなと思います。「こういうわりかん保険はないんですか?」というお問い合わせもありがたいことに結構いただくので、がん以外にも親和性のある分野に取り組んでいきたいですね。
保険会社さんがご自身のユーザーや商品開発で「わりかん保険」をやっていくということを当社は否定しません。当社としてはスキームが世の中に広がれば良いと思っているので、システム提供の面でビジネスとして成り立つ、そんな展開もあり得るかもしれないです。
様々なデバイスと連動して成長していくのが保険の理想
―10年後、20年後の未来の保険はどんなものになっていると想像しますか?
10年、20年で今の保険の形がどこまで変化するか分かりませんが、常に変わり続けるリスクに対して「なんか知らんけど守ってくれるおまもり君」みたいになると未来感があるなと思います。
それをどう実現していくかは難しいと思いますが。
金融商品としての保険だけで保険料が安くなるというのは限界があります。
だから、スマホなどの様々なデバイスと一緒に連動して成長していくというのが、保険に関しては理想的な美しい未来のような気がしますね。
―最後に、畑さんにとって「お金」とは?
僕はお金はポイントみたいなものだと思っています。
レビューの星の数と一緒で、一つの褒める手段、称える手段かなと。例えば、ありがとうっていう感謝の気持ちを表現する方法の場合もありますし、頑張った人に対する報酬の場合もあります。
そんな風に、助けられるべき人が助けられる、もらうべき人がもらうのがお金なんじゃないですかね。
―「お金はポイント」深いですね。本日はありがとうございました。