2020年1月15日、30年ぶりにカードデザインを一新したのを皮切りに、三井住友カード株式会社は「新たなキャッシュレス決済エクスペリエンス」を発表しました。
今回はその「新たなキャッシュレス決済エクスペリエンス」を中心に、キャッシュレスの今後や三井住友カードの強みについて、三井住友カード株式会社・経営企画部の森下陽介さんにお話しを伺いました。
お客様起点だから提供できる新たな決済エクスペリエンス
「安心」「便利」の新しいスタンダードを提案するカードデザイン
スマホアプリ「Vpass」も大きく進化
「かぞくのおさいふ」は“金融教育”にもなる
三井住友カードが考えるキャッシュレスのメリット
三井住友カードが「定番」たる理由
三井住友カード株式会社が考える「お金」とは?
お客様起点だから提供できる新たな決済エクスペリエンス
–この度発表された「新たなキャッシュレス決済エクスペリエンス」の開発経緯を教えていただけますか?
もともとの前提をお話しますと、私たちSMBCグループは2018年5月に「キャッシュレス決済戦略」を公表しました。その一環として発表したのが今回の「新たなキャッシュレス決済エクスペリエンス」になります。
お客様起点で「キャッシュレス社会の実現に向けて課題解決をしよう」という想いがあります。ここでいうお客様とは、お店など事業者様と消費者様の両方ですね。
実際にお客様はどういったことを不安に思っていて、どうなってほしいと思っているのか。それを実現するための取り組みです。
–お客様のお声が根底にあるわけですね。
そうですね。
あと補足させて頂くと、現在様々なキャッシュレスサービスがありますよね。でも、そういった独自のサービスはそのなかで完結してしまうので、汎用性が高いものではありません。
私たちは経済産業省が掲げる「キャッシュレス比率を2025年までに40%、将来的には80%」を実現するために、社会全体が使いやすいサービスを理想としています。
50年来キャッシュレスを進めている会社として、またこの業界のリーディングカンパニーとして、弊社が先陣を切って進めたいのです。
この度の「新たな決済エクスペリエンス」を分かりやすく言うと、次の3つになります。
- 次世代カードのリリース
- クレジットアプリのWallet化
- 家族で使えるキャッシュレスサービス
まずは、それぞれについてお話しさせて頂きます。
「安心」「便利」の新しいスタンダードを提案するカードデザイン
–今回、最も驚いたのはカードデザインが一新されていることです。
そうですよね。デザインをフルモデルチェンジしまして、カード番号などカード情報は裏面に集約しました。
これまではカード番号と有効期限が表面に記載されていました。ただ、盗み見などセキュリティ面で不安を感じられるお客様から多くのお声を頂いており、今回のように裏面に記載しました。
–VISAのタッチ決済が全て標準搭載になるのですね。
はい。サインも暗証番号入力も不要のタッチ決済は、例えばオーストラリアではほとんどのお店で使えます。世界的な潮流なんですね。
何より決済が楽で大変使い勝手がいいですし、店員の方にカードを渡す必要がないのでセキュリティ的にも優れています。
また今年は日本でオリンピックがあるので、VISAとしてもタッチ決済を広めていきたいという思いがあります。対応店舗はどんどん拡大していくと思っています。
–三井住友カードの象徴ともいえる「パルテノン神殿」がなくなったのですね。
はい。新カードは「フューチャーライト」というデザインになります。
お客様の未来を照らす光、お客様の足元を照らす光。様々な場面でお客様を照らす「光」をイメージしました。
以前のパルテノン神殿は約30年続くデザインでしたが、これからはクレジットカードはもちろん、広く「キャッシュレスの三井住友カード」として認知されるようにとの思いもあり、「安心」「便利」の新しいスタンダードをご提案するカードとして発表させて頂きました。
デザインのラインナップはクラシックカード、ゴールドカード、プラチナカードで各2種類。あと、プライムゴールドは1種類の計4券種が2月3日から切り替わりました。
最短5分でカード番号を発行してくれる
また、3月2日からは、インターネット経由でお申し込み頂くと、最短5分でカード番号を発行します。
ネットでの買い物はもちろん、Apple PayやGoogle Payに登録すれば、カードが届く前に実店舗でも買い物ができます。
また、今は入会キャンペーンも拡大しています。
「年会費無料キャンペーン」をはじめ、「20%還元キャンペーン」もこれまでは最大8,000円だったものが今は最大1万2,000円です。
あとは「タダチャン!キャンペーン」であったり、3月2日からは「Visaのタッチ決済体験キャンペーン」も実施予定です。
スマホアプリ「Vpass」も大きく進化
また、弊社は「Vpass」というアプリをリリースしています。カードの明細確認やポイント交換など、カードに付随したサービスですね。
そして3月2日に、このアプリが“Wallet”機能として進化します。
–“Wallet”機能とは、どういった進化なのでしょうか?
日常のキャッシュレス利用すべてを1つにまとめられるアプリですね。
今はキャッシュレス決済に様々な事業者が参入していて、クレジットカードだけでなく、電子マネーなど沢山の支払いツールがありますよね。
数が多いので、どの決済でどれくらいのお金を使ったのかが分かりにくい。ポイントサービスもたくさんあって管理が煩雑です。
キャッシュレス決済自体は進化し裾野も広がっているのですが、お客様にとって、実はその分ストレスが溜まっているのではないかという思いがありました。
そこで、「Vpass」ではこれらを一元管理できるようにしました。
弊社のサービスに限らず、様々な銀行の口座、他社のクレジットカード、電子マネー、ポイントサービスなどお客様の金融に関する情報がこのアプリで管理できるようになります。
–それはありがたいですね!
そして一元管理できるだけでなく、さらにワンランク上の「安心・安全」を充実させるために4つの機能を追加しました。
お客様の「安心・安全」を実現する4つの機能
まず1つ目が「ご利用通知」ですね。カードを使う度に、リアルタイムでプッシュで通知してくれるので万一の不正利用もすぐに察知できます。
メールだと紛れてしまう可能性があるので、アラートはプッシュ通知にしました。
2つ目は「あんしん利用制限」。
不正使用を未然に防ぐために、カードを使わないときはアプリ上で「オフ」に設定すると、そのカードが利用できなくなります。
また、「海外利用」「インターネットショッピング」といった一部機能のみ「オフ」にすることも出来ます。
カード現物が手元になく見当たらない、といったときにも利用停止にしておけばひとまず安心ですよね。そういった心理的な部分を楽にしてあげる役割もあります。
–なるほど。キャッシュレスは心理的な不安が理由で利用しない人もいますから、こういった機能は絶対に大事ですよね。
はい。特に近年はクレジットカードによるインターネットショッピングでの不正利用が増加傾向にあります。その対策を徹底するためにも、これら2つの機能は欠かせません。
続いて、3つ目が「使いすぎ防止アラート」。自分が設定した利用金額を超えたときにアラートで知らせてくれます。
クレジットカードは、限度額が仮に100万円だとしても、常に目一杯使われる方はあまりいません。
この機能は限度額とは別に、アラートされる利用金額を各自で決められるので、計画的に利用するために、そして使い過ぎを防止するために役立ちます。
最後4つ目は「口座残高不足アラート」です。カードの引き落とし金額と、引き落としを設定している銀行口座の残高を比較して、不足している場合にアラートしてくれる機能です。
当然ながら、弊社のお客様のなかには銀行口座の残高不足でお支払日に引き落としが出来ないケースがありますが、その9割以上はついうっかり口座への入金を忘れた方なのです。残高不足をお知らせするとすぐに入金してくれます。
つまり、この機能はうっかり忘れを防ぐためのものですね。
–この4つの機能は、多くの方がクレジットカードに抱く不安や要望を解消・解決するためのものなのですね。
そうですね。
そもそも弊社はクレジットカードを中心とするキャッシュレス決済事業者であり、ライバルは現金です。お客様にいかに現金からより便利なキャッシュレスライフに移ってもらえるのかを考えています。
「かぞくのおさいふ」は“金融教育”にもなる
あともう1つ、「かぞくのおさいふ」というサービスもリリースします。これは1ユーザーではなく、その家族が対象です。家計を上手にキャッシュレスで管理していただきたい、というご提案ですね。
今後キャッシュレスが進んでいくと、お子様が生まれたときから、キャッシュレス社会が当り前の世の中になります。でも、今の日本には学校がキャッシュレスの取り扱いを丁寧に教えてくれるようなプログラムはありません。
我々キャッシュレスを進める会社としては、小さい子供のときからキャッシュレスに慣れ親しんでもらう環境を作る責任があると考えています。
我々も企業としてさまざまな金融教育授業やセミナーなどの活動を行っていますが、「かぞくのおさいふ」は、お客様にも家庭内でお子さまの金融教育を上手に進めていただいたり、家計をキャッシュレスで上手に管理いただいたりと、様々なシーンでご利用いただければと思っています。
–新カード、アプリもそうですが、新しいスタンダードになるのが楽しみです。
ありがとうございます。
三井住友カードが考えるキャッシュレスのメリット
–今回の「新たなキャッシュレス決済エクスペリエンス」のメリットを一言でいうと、お客様のキャッシュレスに対する不安を解消する点にあるのでしょうか。
お客様目線はもちろん大切で大前提になります。一方、社会全体でみて、何故キャッシュレスを進めようとしてるのか? その背景を考えてほしいのです。
日本は今後ますます労働人口が減っていきますよね。その分、いままでの業務を効率化していかないと経済がどんどん衰退してしまいます。ではどうやって効率化するのか。
まずはキャッシュレスですね。現金を扱うこと自体が効率化を妨げてますから。
あと、現金決済にはなくて、キャッシュレス決済にあるのは「データ」なんですよね。それを適切に使うことによってお客様により便利な生活をご提案できる。
また新しいビジネスも作れる、お客様に新しいキャッシュレスライフをご提案できる。そういった便利な機能を含んでいるんですよ。
–少し話が逸れるかもしれないのですが、昨年10月から始まった「キャッシュレス・ポイント還元事業」はどう思われますか?
我々のようなキャッシュレス決済事業者にとってはすごくありがたいですね。中小加盟店など、これまでキャッシュレスを導入するハードルが高かったお店にもアプローチしています。
–この決済エクスペリエンスはキャッシュレスの第一歩としてすごく使いやすいですよね。
ありがとうございます。カードとアプリのセットがポイントだと思います。
何より、我々は決済で勝負をしているわけです。今はキャッシュレスサービスが乱立していますが、本業が決済事業以外の他社の場合は、お客様の囲い込み、他のサービスを使ってもらう入口としてのツールという性格が強いです。しかし、我々は決済でこけたら終わりです。
大切なのは「安心・安全」、そして「利便性」だと思います。今のキャッシュレスの機運が単なるフィーバーで終わらないように、お客様の日常に寄り添って、常に心地よいキャッシュレスライフをお届けしていきたいです。
三井住友カードが「定番」たる理由
–ここからは、三井住友カード様全体のお話をお伺いします。三井住友カードの一般的なイメージは「定番」「安心」だと思うのですが、どうでしょうか?
ご認識頂いている通りだと思います。「安心・安全」は我々が最も大事にしている要素のひとつであり、お客様にお選びいただいている一番の要素であります。
そして、50年に亘る伝統・歴史から「定番」というご評価をいただいていると思っています。
–ここまでお客様に安心感を持ってもらうために、具体的にはどういう取り組みをされてきたのですか?
24時間365日の不正使用モニタリングを行っています。その不正検知によってお客様から「不正利用を未然に防いでくれてありがとう」というお声も多くいただいています。
そういったノウハウを50年間培ってきていますので、今後もその「安心・安全」は確固たる自信を持って、お客様にご提供していきます。
–その他、三井住友カード様の強みはどういったところにありますか?
先進性ですね。業界でもいち早く海外の動きを察知して、新しいサービスを他社に先んじて取り入れてきました。
あとは先ほどと重複しますが『お客様起点』であることです。「ここが不便だから今後はこうなってほしい」というようなお声をサービスに活かしてきました。
–業界のリーディングカンパニーとして、また“プロパーカード”として意識していることはありますか?
お客様のキャッシュレスライフがより便利になるように、必要な機能を網羅することですね。
弊社は何かにひとつのサービスに特化しているわけではありません。例えば、ポイント還元率では他社の方が高いケースもあります。
何かに特化するというよりも、「これがないから不便だね」ということがないようにしたいのです。
–つまり、これ(三井住友カード)を1枚持っておけば困らないということですね。
おっしゃる通りです。何か特定の分野で比較すると他にも優れているカードはあります。お客様個々のライフスタイルやお好みに合っていればそれがベストのカードでしょう。ですが一方で、お客様に総合的に満足して頂くこともとても大事です。
–弱みがないのが強みですね。
そうだと思います。
三井住友カード株式会社が考える「お金」とは?
–『すごいカード』はお金の専門サイトなのですが、以前に三井住友カードのCMで「お金ってなんだろう?」っていうメッセージがすごく印象的でした。あのCMはどういった意図で制作されたのでしょうか?
今は電子マネーや仮想通貨(暗号資産)など新しい通貨の概念がどんどん出てきています。そのなかで、皆さんはお金をどう考えていますか? 今一度考えてみてほしいという想いがありました。
また、キャッシュレスはものすごく便利であり、毎日をより身軽に過ごしてほしい。お金に対するストレスから解放されて、心まで身軽になってほしいという想いも込められています。
弊社が掲げている「Have a good Cashless」というメッセージもその想いから作られたものです。
–最後になりますが、「お金」ってなんだと思いますか?
「お金」と聞いてイメージすることは人によって全然違うと思うんですよ。色々な考えがあるからこそ、答えはないですね。
でも、お金の支払い、ペイメントのツールに絞って考えると何が良いのかを考える余地はありますよね。
現金なのか、キャッシュレスなのか。どちらの方が使いやすいのか、伸びしろがあるのか。人口が減っていく日本経済のなかで、どうやってカバーしていくべきなのか。
CMもそうですけど、この機会に今一度考えるきっかけになればと思っています。