今回は、サブスク住居サービス『unito(ユニット)』を展開する株式会社Unito代表取締役の近藤佑太朗さんにお話しを伺いました。
『unito』は近藤さん自身が感じていた「暮らし」に抱いていた課題感から誕生し、外泊分は家賃がかからない料金システム「Re-rent機能」はその最たるものだと語ります。
このサービスの誕生背景から近藤さんが考える「最適化された暮らし」に迫りました。
“住まう”と“泊まる”を統合するサービス『unito(ユニット)』
–サブスク住居『unito(ユニット)』はどういった背景から誕生したのでしょうか。
もともと観光業に興味があって、大学生のときにはクロアチアに留学したことがあります。クロアチアは世界で一番GDPに対する観光業の占める割合が高い国なんです。
そして、22歳のときに宿泊施設を立ち上げました。そこに来てくれる人は旅行者で、非日常を楽しんでいるわけですね。でも、その人たちの話を聞いていると、日常の暮らしに対しての課題感がめちゃくちゃ強いなと思いました。
なにより、僕は人生において「暮らし」は一番大切な領域だと思っていて、いわゆる衣食住の中で「住」は基本中の基本じゃないですか。
だけど「住」の課題ってすごく大きいなと感じています。この最適化された社会において、メディアも食も自分にレコメンド(=おすすめ)されますよね。でも、暮らしは何もない。
歴史的背景が強くて、なかなか手を出しにくい分野なんですけど、課題感が大きいからこそ、「暮らし」は価値提供できると思っています。
–手が出しにくいとはどういうことですか?
土地が有限であることもだし、不動産業界のしがらみだったり、許可が下りないとできないことが多いんです。
認可事業なので、僕たちのようにスタートアップで不動産をやっているのは珍しいです。投資や不動産売買のプラットフォームとかは多いけど、直接のサービスはあまりありません。
–『unito』というネーミングにはどういった想いが込められているのですか?
住まう行為と泊まる行為って似ているけど、業界的には全然違うんですよね。住まう行為は不動産業で、泊まる行為は観光産業なんです。この2つを統合する、ユニット(unit)するという意味合いがあります。
そして、なぜ「to」がついているのかという、toには明確な未来に向かって進むっていう意味があります。
僕たちは「暮らしを最適化する」というビジョンに突き進むという意味を込めて、「unito」です。
–ちなみに、このロゴにはどういった意味があるのでしょうか。
元々、住まいというのは不条理でこわばったものと言いますか、最適化されていないんですね。手前の暗い紺色はその不条理を表しています。
そして、赤い丸は繋げるもの。向こう側の薄いスカイブルーの最適化された暮らしへ繋げるという意味を込めています。
最適化=摩擦がない暮らし。まずは料金システムから
–ビジョンとしても掲げられていますが、近藤さん自身が考える「最適化された暮らし」とはどういったものなのでしょうか。
摩擦なきライフスタイルの土台が最適化された住まいだと思っています。やっぱり暮らしって結構摩擦があるんですよね。一番は料金だと思います。
たとえば僕の場合、月に大体5日間は出張含めて海外にいるわけです。そして、月に4日間くらいは実家に帰ります。月に9日間は自分の家に帰っていないわけです。それに、長期休暇は旅行に行くので、平均すると月に3分の1はいないわけです。
そんな自分が毎日家に帰っている人と家賃が同じっておかしくない? という疑問があります。それが普通なんだけど、すごく不条理だなと感じるわけです。僕よりも家に帰っていない人も沢山いるとも思いますし。
–使った分にだけお金がかかるべきという考え方ですか?
そうです。パーソナライズされた住居を提供したいんですよね。
たとえば服でもブランドものがあるじゃないですか。高くて、カッコいいやつ。そうではなくて、ユニクロであったり、家具ならニトリや無印良品のような「必要最低限」を満たすものですね。
そういった思いがあるなかで最適化って何なの? となったときに、まずは料金システムなんですよね。使った分しか支払わないシステムです。
–私は滞在時間もそうですけど、今住んでいる部屋が広くて使っていないところがあるんです。そこも削れたらいいな、って思うのですが。
それはすごくいい視点だと思います。うちも実は2つの軸でビジネスをしようと思っていて、ひとつは先ほど話したような料金システム。もう一つが広さなんですよ。
今、『unito capsule』というカプセルハウスを特許申請しているのですが、ミニマムな部屋もやっています。
僕たち世代、22歳~35歳で結婚していない人たちの多くは住居に対して、そこまでこだわりがない。不自由なく暮らせるなら、そんなに広い住居は必要ないわけです。それよりも都心に暮らせる方がメリットは大きいですよね。
–衣食住のなかで、とくに「住」に関してはこだわらないといいますか、大事なものなのに、当たり前に押し付けられたもので生きている感じがしますね。
当たり前過ぎるのもそうですが、タッチポイントが非常に少ないですよね。普通に生きていると、不動産賃貸なんて2年に1回しか考えるポイントがありません。
一般の人は知識がないことを前提に回っている世界。知られないような仕組みが昔からあるわけです。でも、今はそういう時代ではないですよね。
ネットが発達して、ソーシャルネットワーキングサービスが発明されて、人と人とが繋がりやすくなって、より見えないものが見えている時代です。そのなかで、不動産もそろそろ見せようよっていう思いはありますね。
『unito』は経済を回す、人を増やす
–『unito』の魅力と社会的意義を教えて頂けますか?
やっぱり一番の魅力は今まで無駄になってた、帰らなかった日でも払ってた家賃がかからない点ですね。大体一人暮らしの家賃って月6万円から9万円ぐらいじゃないですか。日割りにしたら2、3000円になります。
このサービスの外泊した日はかからない料金システム「Re-rent」は非常に合理的で、家に帰らない日の2000円、3000円はお小遣いが入るのと一緒なわけです。その分は消費活動に直接繋がると思っていて、貯蓄に回すこともできますよね。
キャッシュフローが潤沢に回せる。それが叶えられるのはすごくいいなと思っています。
–社会的意義としては、キャッシュフローが回せるという点でしょうか。
そうです。経済を回せますよね。あとは、人が増えます。人口の絶対数は増えない、むしろ減っているわけですが、皆がより外に出るようになりますよね。
このサービスによって、無拠点生活をする人が増えると思うんです。料金がかからないなら出た方がゼロ円だよねって。メイン拠点としては使ってもらいたい。でも月の半分とか3分の1は長野とか和歌山とか福岡とか仙台、長崎とかに行けばいいじゃんってなるんで、関係人口が増えるんですよね。
人口を増やすには、1人が2倍3倍って影分身しなきゃいけない。実質人口じゃなくて、ルーティンでそこの場所に来る人を合わせた人口が関係人口なんですけど、それが増えることによって、日本の経済を活性化させる一助になればいいなと思ってます。
–そういった狙いもあるわけですね。
別に地方に行けと言っているわけではないですけど、自然にそうなりますよね。
人口を増やす、地方創生とかを直接アプローチするのは難しい。それよりも経済を循環させる仕組みを作った方がいいと思っていて、それを『unito』で実現したいです。
今後5年で物件数は2000件まで拡げたいと考えています。場所は都心を中心に、福岡、京都、大阪などに。できるか分からないけど、チャレンジします。
–最後に、すごいカードは「お金のメディア」なのですが、近藤さんにとってお金とは何か? 教えてください。
皆さん似たようなことを言うと思うんですけど、価値を測るための道具ですね。
ビジネスって等価交換じゃないですか。価値を交換する。その相手と等価交換するための道具です。
でも、価値は目では見えなくて、感じ方次第なので人それぞれ違います。だからこそ、それを測るためにお金は必要なんですよね。
–その等価交換の概念が「住んだ分だけ」の料金システムに繋がっている?
その方が合理的だと思いますね。今は当たり前にある、「固定賃貸」をアップデートしたいなと思っています。
–なるほど、ありがとうございました。