金融サービス調査隊の記念すべき第1回目は、株式会社カンムが発行する「バンドルカード」。
広報担当の眞利子さんにバンドルカードの特徴や活用法、フィンテックサービス事業者としての今後の展望をお聞きしました。
バンドルカードの歴史とプロモーション
バンドルカードの特徴
バンドルカードはこんな使い方もできる
「心理的unbanked」を解消するサービスになる
「お金」は物理でなくても可視化されていればいい
バンドルカードの歴史とプロモーション
まずは「バンドルカード」を展開する株式会社カンム、プロモーションの軌跡についてお話ししてもらった。
「弊社は2011年の創業から金融とIT技術力の融合という形の事業領域でやっております。バンドルカード以前は、クレジットカード会社様への送客サービスなどもしておりました」(眞利子さん、以下略)
バンドルカードがリリースされたのは2016年
「ご覧いただいているのが今回お話しするバンドルカード。スマホアプリとリアルカードを結び付けたサービスで,始まったのが2016年の9月ですね。
その後、いくつかの機能追加を経て,今のところはバンドルカードを主軸の事業としています」
現在までのダウンロード数は200万超
「現在のはっきりした利用者数は申し上げられないのですが、ダウンロード数だと200万ダウンロードを超えています」
SNSでのプロモーションを積極的に行ってきた
―テレビCMもやっていましたし、「バンドルカード」という名前はとても有名ですよね。
「はい。あとはTwitterとかYouTubeでもプロモーション・キャンペーンをやってきました。YouTube動画では、これまで何組かの吉本興業所属の芸人さんに出演頂いております」
バンドルカードWEB CM – かまいたち「ホームルーム」篇
「テレビCMは、あまり細かく機能などを説明するよりも,まずはサービス名を覚えていただけたら最高ということでした」
バンドルカードの特徴
ここからが本題、バンドルカードの特徴について話してもらった。
「ご存知だと思いますが、バンドルカードはアプリの形式で提供しています。Android,iPhoneどちらかでインストールして頂けます」
バリューをハンドルするカード
「バンドルカードという名前の由来は『バリューをハンドルできるカード』からきています」
コンセプトは「気軽に持ち歩ける」
「そして、持ち歩くのにちょっと緊張しなければいけなかったり,発行に手間がかかったり.そういった心理的なハードルを課すことないようなものであってほしいというコンセプトです。
物理的なお金ではなくてバーチャルな形になってても,お金はお金なので,それを気軽に持ち歩いてほしいですね」
卵と小鳥からヒントを得たロゴマーク
「『気軽』がコンセプトなので、ロゴは卵と小鳥のイメージからヒントを得たデザインになっています。券面についても、昔ながらの金融機関のカードのなかには、高級感・プレミアム感から“いかめしさ”を覚えるデザインもありますが、それよりは気軽さや親しみやすさを重視したということですね」
ジャンルとしてはプリペイドカード
「キャッシュレス決済はご存知の通り、カテゴリーが非常に複雑なんですね。後払いか前払いか即時払いかっていう分け方があり,そこにインターフェースが技術の発展に伴って,すごく増えているからこれだけ結果がややこしいんですけれども,ようはこの3つですよね」
「バンドルカードはこの中だとプリペイドカードの分類ですね。なかでもバーチャルカードと呼ばれる形態で、スマートフォンアプリを基本にしています」
後払いチャージにも対応
「特徴はどなたでも簡単にすぐ使える。当然ですけど前払い式なので多く使い過ぎる心配がそもそもありません。またチャージ手段の一つとして後払いの決済『ポチっとチャージ』も提供はしているので,使い方に慣れてきたら選んでいただくってこともありますね」
リアルカードの発行も可能
「あとはバーチャルカードですと、オンラインショッピングにしか使えませんが、バンドルカードはプラスチックカードもご発行いただけます。実店舗で使えるプラスチックのカードは追加で発行の手続きをいただきます」
―リアルカードの実物は初めて見ましたが、シンプルでいいですね。
「そうなんです。可愛くて、気軽に持ち運んでいただきたいっていうコンセプトを表現したうちの一つなんです」
カード情報は裏に記載
「カード番号は裏側に入っているんです。先日発表された,三井住友カードさんの新しいデザインも表面にカード番号は書いてなくて,裏に回っているんです。セキュリティ保護のために、最近の潮流ですね。
Twitterで、バンドルカードのリアルカードが届いたよっていう写真を投稿してくださいというキャンペーンを毎月実施しています。
カード番号が表面に書いてあるデザインのカードだと、番号をそのまま写真に撮ってあげる人が一定数いらっしゃるんです。
あと、何かで隠してくださるにしても、割りばしで隠してあったりとかして、見栄えがあまりよくない。そうした問題についても、カード番号を裏面にすることで一定程度解決できると考えました」
現代のニーズに対応した理想的な機能
「申し上げたのはざっくりとした特徴の部分なんですけども,背景としてご説明しますと,お金の払い方に対するニーズがだんだん変わっていますよね。
クレジットカードの決済額自体はECの浸透ともに増加しています。でも実は、保有率は徐々に徐々に減っているんです。反対に、電子マネーの保有率が上がっています。
クレジットカードを作らない原因は、手続きが面倒だったり,セキュリティの事故があった時に対処ができないので怖い、といったマイナスイメージなんですよね。
でも、実際の被害に遭ったことはない人でも、単なるイメージが心のうちの大きい部分を占めているんですよ」
テクノロジーで社会とのギャップを埋める
―とはいっても、クレジットカード払いでないと決済できない場面は多いですよね
「なので,『クレジットカードに対するマイナスイメージ』と『クレジットカードがある程度求められる社会』のギャップを埋めるために,テクノロジーを結集させて,そういった怖さや不便さを解消する。それが開発の背景にありました」
最短1分で発行、最短3分で決済
「アプリ上の手続きだけでカード番号の発行ができるので,ダウンロードしてから最短で1分。すでに買い物をしたいECサイトが決まっていれば,もろもろ入力で最短3分くらいで決済できるんじゃないかとみています。これはキャッチフレーズでもありますけど。
またプラスチックカードを発行して頂ければ、実店舗で使えて何百万,何千万のお店で決済できます。実際お店で出すときは『クレジットカードでお願いします』と言ってしまえば、このVISAのロゴもありますし、混乱することなく決済してもらえます」
バンドルカードはこんな使い方もできる
―「今すぐ決済したい。そのときにバンドルカードで解決された」のようなユーザーの声が多いです。スピード面以外にも便利な使い方があれば教えてください。
可視化できる家計簿として使える
「大昔に『袋分け家計簿』というのがありましたよね。給料から食費の袋,雑費の袋,日用品の袋・・・、封筒ごとに何万円ずつか最初に分ける。浪費を防ぐ管理方法ですね。バンドルカードもそれに近い使い方ができるんです。
アカウントをこの袋分けのうちの一つとみなして,例えば、このアカウントは日用品用に使う。明細とか、チャージ金額の目減りしていく様子がわかるので,それ以上は使えません、という自制が働きますよね。レコーディングダイエットみたいな感じですね」
海外旅行で強い味方になる
「あと海外に行くときは便利です。やっぱり海外だと、不正利用のリスクや不安感が大きいんですけれど,バンドルカードは一時停止と解除がすぐにできます」
※海外Visa加盟店で利用するには、リアル+(プラス)カードの発行が必要です
「修学旅行で海外に行く場合にも有効です。バンドルカードは学生でも作れて、アプリで決済の通知がリアルタイムで飛んでくるので親からしても安心ですよね」
「心理的unbanked」を解消するサービスになる
―今後の展望を教えて頂けますか?
「はい。我々のコンセプト,会社の理念として持っているのは個人が金融にもっとアクセスしやすいようにする。それは決済に限らないんですね。
世の中には色んな金融サービスがあるのになぜか使わない人が多い。その原因は『心理的unbanked』にあると思うんです。unbankedとは欧米で生まれた言葉で、銀行のサービスにアクセスできない人を指して使われます。
日本人はほぼ全員が銀行口座きっちり持っている。でも、心理的な理由で便利なサービスから遠ざかっている状況があります。それを解決するものを作りたいんです」
―素敵ですね。「心理的unbanked」
「これは決済、お金払うシーンには限らないんです.投資かもしれないし,保険、もしかしたらレンディングみたいなサービスかもしれない。当社としては、今年はもう少し決済以外の領域にも踏み込んでくつもりです」
―怖い、不安みたいな心理的な敷居を下げるイメージですか?
「はい。お金の世界だと提供側と受ける側で情報(認識)の非対称が起こりやすい。サービス自体をよりオープンにしたり、シンプルにアップグレードすることで相当変えていけるんじゃないかという思いはあります」
フィンテック事業において、ライバルは現金
―ちなみに、フィンテック事業においてライバルとするサービスはありますか?
「ライバルですか、、、。結論言うとないんですよ。フィンテック業界、なかでも弊社のようなキャッシュレス決済分野の中でよく言うのはライバルは他社ではなく現金なんだと。
バンドルカードはポイント還元を売りにしているわけではないですし、過度なポイント競争に乗らないっていう大方針をとっています。
弊社が10代、20代を対象にとったアンケートでは、趣味が多様化していることもあって、お金の使い方も多様になっています。それと同時に、お金の払い方自体にも好みができているわけです。クレカで払いたいとか、スマホのQRで払いたいとか
なのに、大昔から言われる教条である『借金はいけない』とか、『クレジットカードはいけない』『電子のお金は信用ならない』といった偏った感覚もあり、そのギャップも大きくなっていく。
結局その歪で苦しむのは、多様な趣味をできるだけ自分らしく楽しみたい若い方たちですよね。そういったギャップを少しでもこういうサービスで埋めることができたらいいなとは思いますね」
「お金」は物理でなくても可視化されていればいい
―株式会社カンムには「世の中のお金の流れを円滑にする」という理念があるなかで、今後「お金」はどう在るべきだと思いますか?
「物理ではある必要はありませんし,もっとお金の流れがわかりやすい可視化が進んでいくべきではないか、なったらいいなと思います。
それこそバンドルカードのリアルタイム通知なんてそうなんですけど.物理で現れるわけじゃないし家計簿に書くわけでもないんですけども,確かに可視化されている。
何もお金は紙のお札、コインである必要はありません。本来の概念(=価値、信用)が損なわれるわけではありません。そういった考え方は、今後2,3年でより進んでいくのではないでしょうか」