「あなたは何歳まで生命保険が必要ですか?」
現在日本では、全世帯の88.7%が生命保険に加入し、平均して年間38.2万円の保険料を支払っているという調査結果があります。※ 月に3万円以上ですから、一生で支払う金額を考えるとかなり高額です。
人生100年時代が到来し、資産形成の必要性が高まり、お金の置き所が重要になっている中、生命保険との関わり方にも変化が起きています。
こんにちは。ファイナンシャルプランナーで、現在 ソニー生命のライフプランナーとして活動している立川健悟です。生命保険が普及していることは非常に良いことだと感じています。一方で、ファイナンシャルプランナーとして、お客さまの家計を拝見させていただくと、保険料の支払いが生活を圧迫している状況を見ることは少なくありません。家族の生活を守るための生命保険が、家族の生活を苦しめているようでは本末転倒です。
人生100年時代における生命保険の2つの役割
そもそもの生命保険の役割は、事前に予測のできないピンチが起きたときの、家計への負担を抑えるというものです。
そこで、適切な判断をするためには、ピンチのときの家計への負担について捉えておく必要があります。
例えば、ご主人、奥さま、お子さま1人の3人家族で、ご主人が亡くなった場合、遺族はご主人の収入を失います。しかし、国から遺族年金を受け取ることができるため、完全に収入がなくなるわけではありません。条件を満たしていれば、お子さまへ付加給付もあります。
また、家を購入していて、住宅ローンを組んだときに団体信用生命保険に加入していれば、住宅ローンの返済が無くなります。
このように、ご主人の収入は失いますが、別の形で収入を得られたり、毎月の支払いが減ることがあります。これらを把握し、ピンチのときの家計の収支と、希望する生活を維持するための不足分について、その大きさを捉えておくことが大切です。
ここでは、ピンチの起こるタイミングについて考えることもポイントです。
働き手が若くして亡くなってしまうと、本来想定していた収入が入ってこない期間が長くなり、それだけ家計への負担が大きくなります。
一方、定年後に亡くなるなど、それほど収入を得ていない状況であれば、家計への負担は小さくなります。
お子さまがいる場合は、さらに注意が必要です。お子さまが生まれた直後にご主人が亡くなってしまうと、残された遺族がお子さまにかかる全ての学費を用意することになります。
一方、お子さまが社会人になった後であれば、学費を心配する必要はありません。
このように、年齢を重ねるごとにピンチのときの家計への負担は小さくなります。
ちなみに、世の中には年々受け取る保険金が減っていくタイプの生命保険もあります。家計への負担を穴埋めする分だけ保障を確保できるうえ、定額の保険金を受け取ることができる生命保険よりも割安なのでおススメです。
ここまでが従来の生命保険の役割ですが、人生100年時代の到来により、もう一つの役割を持つことになりました。
それが、長生きというピンチに備えて使えるお金を増やし、資産形成を助けるというものです。
自己投資や資産運用など、資産形成のためにお金を最適なタイミングで用意するには、不測の事態への備えを出来るだけ少ないお金で用意することが重要です。ここからは、その考えに沿って、生命保険からの2つの卒業についてお話します。
生命保険からの卒業
生命保険はピンチのときの家計への負担を抑えるためのものですが、もし想定される負担が、手元の資産で十分にカバーできるのであれば、あなたに生命保険は必要ないかもしれません。
一般的に、年齢を重ねるにつれて資産は増えていき、一方で、ピンチのときの家計への負担は、年齢を重ねるにつれて減っていく傾向にあることから、どこかで「ピンチのときの家計への負担 < 資産」というタイミングがやってきます。
その後、資産が増えていくという見通しがあるのであれば、例えピンチになったとしても資産を取り崩すことで、遺族が生活に困ることがなくなるため、ここで生命保険からの卒業を考えることが出来ます。
保険料の支払いからの卒業
もうひとつが、保険料の支払いからの卒業です。
一生涯保険の効果の続く終身保険など、保険種類によっては、「保険料を支払う期間」を調整出来るものがあります。
この調整については、住宅ローンをイメージしてみてください。35年ローンよりも10年ローンの方が、支払う利息を安く抑えることが出来ます。
実は生命保険も同じで、払込期間を短くすることで、月々の支払は増えますが、総支払額を安く抑える効果があります。
例えば、お子さまの成長に合わせて、短期間で保険料の支払いを終えることで、大学入学などのお金のかかってくるタイミングには、保険料の支払いが終わり、その分お金を学費に回すことが出来ます。
ちなみに私も終身保険に入っていますが、前回10年払で契約したので、息子が大学生となる48歳のタイミングで、保険料の支払いからは卒業する予定です。
あえて生命保険から卒業しない
資産が十分にありながら、生命保険を継続するという選択肢もあります。
資産がピンチのときの家計への負担を上回ったからと言って、生命保険を卒業して、まとまったお金を不測の事態への備えに回してしまうと、その後の生活の中で急に大きなお金が必要になったときに、そのお金を使うことに躊躇してしまいがちです。
そうなるくらいであれば、生命保険を継続して、備えを確保したうえで、資産を有意義に使うという考え方もあります。
また、生命保険には支払い期間中の税金の控除や、保険金の受け取り方によっては非課税枠などもあるため、それらを効果的に活用したい方は、生命保険を卒業することなく、継続されています。
あなたの生き方と価値観に合った選択を
人生100年時代を楽しく豊かに生きていくためには「時間」「お金」「健康」の3つの観点が欠かせません。お金を「リスクへの備え」に回しすぎてしまって、普段の生活を圧迫していたり、自分のやりたい経験を最適なタイミングで出来なくなってしまうのは、本当にもったいないです。
複雑でわかりにくいと言われがちな生命保険ですが、分からないままにしておいても良いことはありません。定期的に内容の確認や、見直しをかけることで、あなたの生き方や価値観に合った備え方が出来ます。一人で考えることが難しい場合は、加入している保険の担当者や周囲にいる信頼のおける金融アドバイザーの力を借りてみてください。もちろん、ご縁がありましたら私もご相談に乗ります。
あなたが、リスクを正しく捉え、お金を効果的に使い、長く楽しい人生を歩まれることを、心から願っています。
※出典(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より