ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。
この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。
ジャパンネットバンクがPayPay銀行という名前に社名変更されることになりました。ネット上では、「衝撃」「なんかダサい」という声も上がっています。今回は、この名前の付け方が正解なのかどうかを考えてみたいと思います。
新興企業が球団を買う理由
PayPayは、ソフトバンクとヤフーが共同出資した会社です。それぞれ50%出資なので、対等です。名前でいうと、ソフトバンクは福岡ソフトバンクホークスを保有しています。元々はダイエーホークスでした。スーパーマーケットを運営していたダイエー傘下だった球団を2005年にソフトバンクが球団株式と興行権を買い取り、名前にソフトバンクの文字が入りました。
新興企業が球団を買い取る理由は、テレビで名前が連呼されることによるブランド浸透とブランド確立の効果を狙ってということが一番です。「今日のソフトバンク対楽天の試合結果は、・・・・」「昨日の福岡ソフトバンクの先発は、・・・」のように社名が呼ばれます。
新興企業にとって、ブランド確立が重要です。ですので、オリックス、DeNA、ソフトバンク、楽天などが野球チームを所有したわけです。それ以前は、球団はお客さんを運ぶための交通機関と一体化していました。阪急、西武、南海、阪神、近鉄のように電鉄系の会社が球場を持ち、その球場まで運ぶ鉄道路線というビジネスモデルでした。そのビジネスモデルは陳腐化したので、各社球団を手放し、新興勢力の企業の所有する球団へと変身したのです。
同じく、「EXILEのライブを東京ドームで行う」のように、スタジアム名も連呼の対象になりますので、ネーミングライツが売られています。福岡ドームは、ヤフオク!ドームという名前になり、5億円が支払われました。
味の素スタジアム、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島、ZOZOマリンスタジアムのようにネーミングライツを使って、スタジアムの名前をつける権利が売買されています。
その流れで、ヤフオク!ドームは、2020年より『福岡 PayPayドーム』になりました。ちなみに、最初は福岡ドーム、その後にヤフードーム、ヤフオク!ドームを経て、福岡 PayPayドームとなりました。ソフトバンク、ヤフーグループが名前を定着させたいブランド名を球場につける戦略があるということがよく分かります。
「ペイペイ」は秀逸なネーミング
PayPay(ペイペイ)という名前をソフトバンク陣営が付けたときに、これは良い名前だと私は確信していました。○○ペイが乱立している中で、ペイを二回連呼して、「ペイペイ」とするのは、○○ペイという仲間から一歩飛び出してわかりやすくなります。
実に、覚えやすい。
Origami Pay、LINE Pay、au PAY、メルペイ、楽天ペイ、QUICPay、ファミペイ、セブンペイ、ゆうちょPay・・・とにかく、○○ペイが乱立すると、どれも同じように見えてしまいますが、ソフトバンクペイでもヤフーペイでもないPayPay(ペイペイ)というネーミングは秀逸だったのです。
そのおかげで、還元キャンペーンの話題性もあり、QRコード決済で一躍認知度が一番になりました。それを徹底するためのPayPayドームであり、ソフトバンク系列の金融関連会社を認知のあるPayPayで統一する方策に出たのです。
それがPayPay銀行です。元々はジャパンネットバンクでしたが、PayPay銀行という名前にすることで、PayPayとの一体化、同じ系列ということが一般ユーザーにも分かりやすくなります。
ただ、「ペイペイ」という軽い響きのワードが銀行につくということで、「衝撃」「なんかダサい」という反応もあったわけですが、この反応があるということは、ネーミング効果は十分なのです。ニュースバリューがあり、連呼されるということはやっている価値があるのです。
au傘下のじぶん銀行もじぶん銀行から、冠にauを付けた、『auじぶん銀行』へ社名変更していますが、正直なところ、あまり認知されていません。話題にもなりませんでした。auも同じく、auブランドを強化してようとしているわけですが、「PayPay」というブランドのほうがより強固に認知されていることがネットでの話題からも読み取れます。
ヤフーカードもPayPayカードに、グループ傘下の証券、投信、FX、保険もすべて社名変更して、PayPay証券、PayPay投信、PayPayFX、PayPay保険となっています。金融のトータルブランドとして、PayPayを位置付けているわけです。住友とか三菱のような財閥系の重厚な名前とは響きは違いますが、新しい風を感じる社名変更です。
共通の社名に揃えるもう一つ重要な意味もあるのですが、長くなりそうなので、その機能がPayPayに搭載されたら、詳しくご説明したいと思います。
とにかく、振興決済サービスとしては、一気呵成に攻勢をかけているPayPayの新しい仕掛けですから、2021年にPayPay銀行に正式変更されるときには、大型のキャンペーンなどの面白い展開が期待できそうです。