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お金マンダラ
【第9回】いまさら聞けないマイナンバーカードとは

ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。

この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。

いまさら聞けないマイナンバーカード

マイナンバーカードという言葉は耳にしていますが、結局のところ、よくわからない。でも、みんな当たり前のようにマイナンバーとかマイナンバーカードとかマイナポイントとか言っています。
ここでは、いまさら聞けないマイナンバーカードについて、ご説明します。

この連載はお金にまつわる話でしたよね?

はい、そうです。マイナンバーカードはお金に関係するカードでもありますので、今回は話題に取り上げました。

マイナンバーとは

まず、最初にマイナンバー(国民番号)とは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」という法律に基づいて、付与された12桁の番号です。
法律によって決められた番号ですから、国民全員が持つことになりました。

では、この番号マイナンバーを何のために使うのかというと、主に3つの用途に限定されています。社会保障、税金、災害対策になります。

2016年から行政手続における利用が開始されています。番号だけがあればよいので、マイナンバーカードは必要ありません。12桁の番号を記憶できるのであれば、極端な話、記憶だけでもOKです。

たとえば、税金。私の場合ですと、マイナンバーカードは作っていませんでしたが、本を書いているので、出版社から印税などの収入がありますが、その申告のために、出版社にマイナンバーを記載した書類を求められていました。

個人に1つ割り当てられている数字で、その人の税金を管理しようということです。作家だと、ペンネームは複数持てますよね。ミュージシャンなどのアーティストもユニットごとに名前が違っていたりします。
ですが、実在する本人は1名ですから、収入はマイナンバーで集約されるという仕組みになるわけです。

ちなみに、この番号の付与は日本に住む人間としては、拒否することはできず、好む好まないに関わらず、決められているのです。赤ちゃんも出生届を出せば、自動的にマイナンバーが付与されます。外国人であっても、日本に住民票を持つ人には付与されています。

繰り返しますと、今は法律になっているので、番号付与については逆らえない。ですから、メリットを享受したほうがお得です。

マイナンバーカードとは

では、カードはどういうものかというと、単純に、氏名や住所、そしてマイナンバーが文字でカード上に記載されています。

運転免許証やパスポートと同じように、身分証明証として使えます。
今のところ、発行が無料というところがお得です。

個人を特定するために、顔写真もついています。パスポートや運転免許証と同じような利用法ができるカードにマイナンバーがついたという形です。運転免許証の場合も番号がついていますが、似たようなものだと思えばよいでしょう。

ICチップが内蔵されたカードなので、その中に入っている電子証明書を利用して、本人を特定することができます。この機能を利用して、e-Taxなどの電子申請がインターネットでできるようになっています。

コンビニやドラッグストア、スーパーマーケットなどのマルチコピー機で住民票、印鑑登録証明書、各種税証明書などの行政書類を取り出すことができるのも、マイナンバーカードのICチップを利用して本人確認をしているからです。

マイナンバーカードがなければ、役所に赴くしかありませんでしたが、この機能によって、近くのお店が開いている時間であれば書類を取り出すことができます。

このICチップの読み取りが、最近のスマートフォンではできるようになったので、自身のスマホを使って個人認証を行うことが簡単にできます。
ICチップの情報が誰でも自由に見れるわけではなく、マイナンバーカードを作る際に設定したパスワードが個人の認証のためには必要です。
銀行のキャッシュカードと暗証番号と同じようなものです。

このマイナンバーカードを使うことで、色々な行政サービスが便利に使えるようになるのですが、マイナンバーだけ付与されていても恩恵に預かることはできないわけです。

不信感とマイナポイント

法律では、マイナンバーは決められていますが、マイナンバーカード を持つことは義務ではありません。ですので、マイナンバーは国民全員が持っていますが、マイナンバーカードの普及は進んでいません。そこで、マイナポイントというキャンペーンをやって促進しようとしているわけです。

マイナンバーやマイナンバーカードは、私は便利な仕組みだと思うのですが、一般的には『国民総背番号』などと呼ばれ、導入にあたって賛否がありました。
そんな不信感もあるためか、マイナンバーカードを作った人は、2020年8月時点で、20%程度です。

普及のために、舘ひろしやずんの飯尾和樹がCMで告知しています。こういう広告費も税金を使うのかと思うと、個人的にはもっと違うところに使ってほしい気がしますよね。

コロナ禍での10万円の定額給付金が国から支給されましたが、このときにマイナンバーカードを使う申請の方が早く支給されることもあり、マイナンバーカードを作る人が増えました。直接的なメリットがあるほうが普及は進みます。

マイナポイントは、コロナ禍より以前に検討されていた普及作戦です。
法律上、マイナンバーカードには、お金を付与することはできません。カードができるのは、個人を認証することだけです。10万円の定額給付金のときは、カードは個人を特定するために使われているだけで、実際には、銀行口座などを別に申請して設定したはずです。

個人を特定できるのは、平等に何かのサービスを行うときに便利です。日本だと、マスクを配るのもとても時間がかかりました。その前には、買い占めも起こりましたよね。お隣の国、台湾では、政府が管理して国民に平等に配るシステムをいち早く構築していました。これだけスマートフォンやコンビニも普及していてインフラは整っている日本ですが、政府や行政に対する不信感がマイナンバーカードの普及を妨げているわけです。
ほんと、もったいない。

いまさら聞けないマイナポイント

マイナポイントは、マイナンバーカードを持っているだけで政府から5000円がもらえます。マイナポイントについては、別の記事で書きましたので、詳しくはそちらを読んで頂ければと思いますが、簡単にいうと、お金を配布するために、国と提携した決済サービスで2万円使うと、5,000円がポイントなどでもらえるという仕組みです。決済手段を持たないマイナンバーカードでお金のお得感を出すために政府が考えた普及作戦です。

経済活性化のためのレバレッジ効果を狙っています。5,000円を単にバラまくのではなく、2万円使うと5,000円もらえるということで、2万5,000円分の消費を促しています。それに乗っかってキャッシュレス決済をしている会社がお金の部分を代行しているわけです。その販促費も消費者はもらえます。

それだけではなく、政府が主導しているマイナンバーカードと紐づけたキャンペーンなので、自治体も乗っかることが容易で、自治体からもポイントが付与されたりします。
販促用のお金ですから、たぶん今だけです。もし次があるとしたら、そのときには、また国民全員がお金をもらえるキャンペーンになるはずです。つまりは、そうなったら2回お得です。とにかくキャンペーンが終わる前に作って、恩恵に預かるのが良いかと思います。

マイナンバーカードの未来

普及がどれくらい進むのかは未知数ですが、どんどん便利に使えるようになるはずです。持っている人だけが恩恵を受けられます。保険証として登録して使えば、年末の医療費控除がボタンひとつで処理できるとか、新しい医療機関へ行っても過去の診療履歴を患者が許可したら開示できるようになったりとか。
税金の申請や還付もデジタルでサクッと済むようになるかもしれません。
日本の行政サービスはデジタル化が遅いですけど、私たち国民がどんどん要望を出せば、より便利に変わってくると思いますよ。

PROFILE

美崎栄一郎 (みさきえいいちろう)

ビジネス書著者、講演家、商品開発コンサルタント。
1971年横浜生まれ、大阪育ち。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、花王株式会社で約15年勤務。2011年に独立し、現在に至る。
花王時代から社会人向けに勉強会・交流会を主催、著書を執筆。
これまでの著書は『iPadバカ』『キャッシュレス生活、1年やってみた 結局、どうするのが一番いいんですか?』など40冊以上。