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お金マンダラ
【第10回】海城とアマゾンの倉庫は同じ?!

ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。

この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。

アマゾンの倉庫が持つ共通点

今回は輸送コストに関する話題です。通販だと送料って気になりますよね。

通販自体は、コロナ禍においても絶好調です。先日、私のところに届いたアマゾンのプレスリリースでは、新しい配送センターを4箇所、2020年の下半期にオープンさせるという。埼玉県の久喜市、東京都の府中市、埼玉県の坂戸市、埼玉県上尾市がその4つです。

【PR TIMES】Amazon、新たに4カ所の物流拠点を開設

今回の埼玉3箇所、東京の府中と、関東にさらに物流倉庫が増えることに驚きでした。現状では八王子市、市川市、八千代市、印西市、小田原市、川崎市、川越市、比企郡川島町、川口市と9拠点もあるのに、さらに4つ追加ですから。

ちなみに、中部地方には、岐阜県の多治見市だけ。関西では、堺市、大東市、茨城市、藤井寺市、高槻市、京田辺市と6箇所。九州は、鳥栖市だけ。

これだけ、関東に物流拠点が多いと、関東だとアマゾンで買ったものが、速攻で届くのも分かります。関東には人口も多いですが、実際に購入する人も多いんでしょうね。

アマゾンの倉庫は巨大でハイテク化しています。そのため、広大な土地も必要です。で、地理に詳しくなければ、前述した配送拠点の町の位置が分かりません。

でも、共通点があるのです。

高速道路のインターチェンジの間近ということです。出荷してすぐに高速に乗る。商品の荷入れもトラック輸送でサクッと倉庫に入れるということなのでしょう。

高速道路網が発達したおかげで物流の方法が変わりました。アマゾンは高速道路網が発達したあとの会社です。石油化学系の会社はみんな海のそばでした。原料の油をフェリーで運んでくる港があることが重要でした。

私が以前に務めていた会社も洗剤の原料で、東南アジアで採れるヤシ油を使っていましたので、海の近くに工場がありました。

もう少し昔だと、日本で石炭がたくさん取れた時代は列車でした。ですので、炭鉱のそばに鉄道網が引かれていました。

木材や農作物を運ぶために鉄道が使われた時代もありました。その場合も、鉄道駅はその産地に近い場所まで線路が引かれていました。

いま、赤字の鉄道会社が増えているのは、こういう商業的な利用も減り、普段の移動も自動車になることで、公共の移動手段として使われる頻度も減ったからです。

鉄道の近くが便利ということで、鉄道の駅近が活性化して、街を形成していくという都市発展の流れが現在は主流ではなくなったのは、人の動き、商流が変わったからです。

かといって、倉庫だけがあればよいので、インターチェンジの近くが人で賑わうことはありません。アマゾンの倉庫のような物流拠点は増えるでしょうが、飲食店がたくさんできるということはないでしょう。

土佐のお城

高知は、海に面した場所に土佐城というお城が作られました。山内一豊が掛川から徳川家康の命令で転封してきたあとです。このあたりのお話は大河ドラマにもなった司馬遼太郎の『功名が辻』に詳しく書かれていますが、築城は江戸初期のことです。

その前の領主は、長宗我部氏で、お城の場所は岡豊城という山城でした。それを海城に変えたわけです。広島城も当時は海城でした。天草四郎の乱があった原城も海城。もちろん、大阪城も江戸城も海城でした。城のそばまで船で移動できたのです。

現在は、埋め立てが進んでいますから、海がとても遠くなっていますが、江戸時代は海のそばだったわけです。大量輸送できるのは、船だけでした。当時は自動車もありませんし、飛行機もありません。牛や馬で運べる量より船のほうが圧倒的に物量が多かったわけです。

そこで、港のそばにお城をつくるという発想になったわけです。アマゾンの倉庫と海城の構築は同じ発想ですよね。

元々は山城は戦をするときには便利でした。ですが、統治をするという意味では不便です。山の上まで荷物を運ぶのも大変です。土佐城の博物館には、当時の南蛮人の宣教師が残した地図があります。TOSAのような港が書かれています。従来は京都からの流刑地の一つが土佐だったわけですが、西洋人が作った日本地図にはTOSAが中心のように見えます。

時代によって変わる拠点の場所

時代によって、経済活動の拠点が変わったわけです。山から海へ。移動手段の発達により、変わったということもあります。船という手段が活性化したことで、城や街は海の近くに移動しました。船でやってくることが前提の西洋人の作った地図に港が中心に描かれるのはそういった理由です。歩いてモノを運んでいた時代から船へ。

そして、明治時代に鉄道という手段が生まれたことにより、日本中の街は鉄道と駅を中心に発展してきました。新橋から横浜で始まった鉄道は、あっという間に日本全国まで伸びました。ですから、駅を中心に日本の都市は発達しました。

現代はさらに飛行機という移動手段が生まれました。ですので、大都市のそばには、空港があります。逆に空港を持たない大都市はありません。日本だと、例外的に京都くらいです。京都は大阪国際空港(伊丹空港)がそれほど遠くないですが。

運送業の雄、Fedexが空港と飛行機を駆使して、高速に荷物を世界中に届けることができるのは、飛行機という手段に最適化したからですよね。

実は、アマゾンはその先も見越したこともやっています。ロケットによる輸送です。

「アマゾン、ロケット」で画像検索や記事検索すると、出てきます。アマゾンは色々と投資しているんですよね。

ロケットで輸送する時代もそう遠くはなさそうなのです。
ざっくり言うと、飛行機だと飛んでいる間に燃料が必要ですが、ロケットで大気圏外まで出てしまうと無重力状態ですから、燃料コストが要らないので、長距離輸送の場合、コストが下がる可能性があるのです。

となると、ロケットの発着場所に近い場所にアマゾンは倉庫を持つんでしょうかねぇ。山城から海城に移行したように。

PROFILE

美崎栄一郎 (みさきえいいちろう)

ビジネス書著者、講演家、商品開発コンサルタント。
1971年横浜生まれ、大阪育ち。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、花王株式会社で約15年勤務。2011年に独立し、現在に至る。
花王時代から社会人向けに勉強会・交流会を主催、著書を執筆。
これまでの著書は『iPadバカ』『キャッシュレス生活、1年やってみた 結局、どうするのが一番いいんですか?』など40冊以上。