ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。

この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。

空き地を駐車場にしていると儲かる？

これだけ、空き地が駐車場になっていると儲かるんだろうかと素朴な疑問を感じます。

疑問があれば、計算してみれば答えも見えてくるはずです。では、ざっくり計算してみましょう。

東京の品川区の東急線沿線の駅近くの駐車場は、220円/12分という料金でした。１時間駐車すると、1,100円になります。

ちなみに、このあたりの地価は、検索すると300万円/坪でした。車を1台停めるのに、必要な坪数を４坪とすると、1200万円の地面の上に、時間単価1,100円で駐車することになります。

ざっくり、1万時間以上停車すると、土地を買ったほうが安いことになります。
1万時間はおおよそ1年ですから、1年間コインパーキングに停めていると土地が買えるという計算になります。さすがに1年間放置する人はいませんよね。

では、月極の駐車場として計算してみましょう。
この付近で検索すると、月極の駐車場は3万8,000円です。1年だと46万円。26年間停め続けると、土地が買える計算になります。

こう考えると、月極の駐車場だと、費用対効果が合いませんよね。相続などで譲り受けた土地ならば良いかもしれませんが。

コインパーキングが増える理由は、月極の駐車場にするよりも儲かるからです。もちろん、コインパーキングが常に満車という状態はありえませんので、理論値ですが。時間単価は高めに設定している分、儲かるわけです。

コインパーキングだと1時間1,100円で24時間利用したとすると26,400円。2日も稼働させれば、月極より売上が高い。2割くらい稼働で良いと考えると、コインパーキングが増える理由がわかります。

駅に近い便利な場所なので、この料金でしたが、不便な場所でも必要ならば、駐車場があり、料金が発生します。当たり前ですが、地価が低ければ、駐車料金は低くなります。ですが、採算性はそれほど変わらないんじゃないかと考えられます。

駐車場よりマンションの方が儲かる？

では、この土地を住居にするとどうでしょう。

この近くで、1LDKのマンションの家賃は15万円/月です。12坪くらいです。つまり、駐車場3台分の広さです。1年間の家賃は180万円になります。駐車場3台だと、138万円ですから、マンションにしたほうが売上は高い感じはしますが、建物を建てる費用もかかります。

もちろん、マンションだと、階層構造ですから、階数が増えれば、土地あたりの収入は増えることになるでしょう。

ですから、利便性の良い土地であれば、建物を建てる費用がかかったとしても駐車場より収益が出る可能性もあるでしょう。

すぐにマンションを建てなくても、建てるまでの間はコインパーキングにしておけば、空き地にしておくよりは儲かります。月極駐車場にしてしまうと、マンションを建てる際に、契約した人に解約してもらう必要がありますが、コインパーキングはその心配はありません。

そういう意味で、住宅街の空き地がコインパーキングになっているんだろうと想像ができます。

空き地のままだとどうなる？

空き地のままでも、税金はかかります。
ですが、駐車場にしてしまえば、土地への税金はかかっても、収益も出ます。で、最悪赤字になっても税金が減ります。

空き地にするより、駐車場にしたほうが得ということで、余った空き地が駐車場になるケースが増えているのです。

駐車場の運営は、面倒くさくないの？

従来ならば、駐車場の運営は面倒くさいものでした。月極の駐車場ならば、契約書を締結しなければなりません。ですが、コインパーキングは契約書が必要ありません。

停めたら、お金を徴収さえすればOKです。その徴収も機械がやってくれます。お金の回収などの手間はありますが、最近は駐車場を専門に運営している会社に業務委託してしまえば、利益は減りますが、手間はかかりません。

業務委託される会社も効率化しているので、トラブルがあったら、遠隔操作で駐車場のロック解除やお金の入出金なども管理して、無人化、省力化して運営がなされています。コインパーキングと言いつつ、コインを使わない駐車場が増えているのも、その一環です。電子決済にしてしまえば、硬貨の回収という手間が省けますから。

そういった背景なので、コインパーキングはもっと増えそうな気がします。ですが、おそらくコインは使わなくなるでしょう。

コインパーキングという名前はなくならない

車がなくなるというのは当面なさそうですが、コインパーキングでコインは使えなくなるかもしれません。ちなみにコインパーキングは和製英語。英語ではPay Parking lot です。有料駐車場ということですね。ただ、私達が通常使うのは、有料駐車場ではなく、コインパーキングです。

そうすると、コインを使わないとしたら、何パーキングというのが良いのでしょうか。QRパーキング、電子パーキング、どうもしっくりきません。

貨幣や通貨という言葉の貨という文字も、貝がお金の代わりだったころの名残です。それでも私たち日本人は未だに使っています。そう考えると、コインがなくなってもコインパーキングという名前は残るのかもしれませんね。