ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。
この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。
クーポンに釣られて、ドラッグストアに行って気付いたこと
「クスリのカツマタ」というドラッグストアに行ってきました。メルペイのクーポン券で500円以上の商品を買うと15%還元されるというキャンペーンにまんまと釣られたわけです。
で、500円以上の欲しい商品を探しているうちに、改めて、店頭で色々な戦いや同盟が繰り広げられていることに気付きました。
このときの私は、968円の値札のついた花王のめぐリズムのアイマスクを15%引きの822円で買いました。メルカリのクーポンを出して15%還元(146円分)されたわけです。
しかし、それだけではありません。
レシートを見ると、トモズポイントが120円付与されていました。クスリのカツマタは、ドラッグストアチェーンのトモズグループです。住友商事が親会社です。つまり、住友商事系のポイントが付与されていたのです。
その内訳が本日限りポイント10倍で70ポイント、さらに、この商品を買うと50円ポイントという花王の販促費分の合わせて120ポイントです。
ポイントカードを2つ出せるので、ポンタカードを見せると、買い物に対して200円で1ポイントなので3ポイント。ポンタは三菱商事が関わっています。
三菱商事から3円。花王から50円。住友商事から70円。メルカリから146円。
合計269円。結果的に699円の買い物になっていたのです。
そう。ドラッグストアは、いま、戦国時代なのです。
戦国時代であれば、たとえば、武田信玄が今の山梨県を拠点に甲斐国に領土を持ち、隣国の神奈川県の小田原が拠点の北条氏、静岡県の駿府城を拠点した今川氏、北陸の上杉氏など隣国と同盟や戦いを繰り広げていた状態と変わりません。
歴史好きとして、ちょっとワクワクしてきました。
ドラッグストアの歴史
では、ドラッグストア業界全体を俯瞰してみましょう。
ドラッグストアという業態が成長し、日本全国各地にドラッグストアが増えました。ですから出店ラッシュはほぼ終わっています。そこで、次の価格競争に耐えれられるよう、商品を仕入れるメーカーに対して価格交渉力を持てるように、ドラッグストア同士で提携したり、吸収合併する戦略が採られました。
ちなみに、「クスリのカツマタ」はトモズグループのドラッグストアです。神奈川と東京に店舗がありますが、トモズに2009年に吸収され、事業統合されています。株式会社トモズは、住友商事の100%子会社です。
トモズグループは、アメリカンファーマシーを買収し、 西友グループの株式会社朝日メディックスやコーエイドラッグ、クスリのカツマタを統合し、現在の規模になりました。
それでもドラッグストア業界のなかでは弱小です。弱小ゆえに、いろんな戦術で生き残りをかけているようです。
お店のポイント(トモズポイント)をアプリで付与する作戦
クスリのカツマタの店頭では、トモズポイントが貯まるトモズアプリの入会キャンペーンが店内に貼り出されていました。早速、ダウンロードして登録しました。
入会するだけで、300円分の買い物ができるクーポンがアプリ上で発行されました。
つまり、元手0円で300円貰えたわけです。有効期限は2ヶ月後です。有効期限があるということは、来店頻度をあげてもらう目的なのでしょう。
さらに毎週水曜日は、好きな商品一つ15%引きクーポンがアプリで配信されますとPOPがありました。メルペイの15%クーポンに釣られてきたわけですが、アプリさえあれば毎週水曜日は15%オフのクーポンがもらえるので、次は水曜日に来店せねばと思ってしまいました。ドラッグストア側の思うツボです。
メルペイで知ったお店のアプリを入れることで、次からはドラッグストアのアプリで私はお得な割引を受けられますし、店舗側はメルカリに販促費を払う必要がなくなります。
つまり、自社アプリの効果は、店舗への誘導を販促費を外部に出さずに促すことが大きい。
ポイント戦国時代
店内を見渡すと、ポンタポイントで支払うと5%、10%、15%オフというPOPがあります。共通ポイント(ポンタポイント)も同時に貯まり、使えるわけです。
ドラッグストア独自のポイントとポンタポイントの2種類貯まるわけです。ちなみにポンタポイントは、三菱商事の関連会社である株式会社ロイヤリティ マーケティングが運営しているポイントサービスです。
戦国風に表現すると、勝又氏の率いるクスリのカツマタというローカルドラッグストアが住友氏が率いる住友商事系のトモズグループに併呑され、さらにトモズグループは競合である三菱氏、つまり三菱商事の関連会社とポイントサービスでは同盟を結んでいるわけです。
最近、ポンタポイントはau PAYと提携したので、au PAYを使うとポンタポイントが貯まります。
ポンタポイントはローソンでよく見かけましたが、ローソンは三菱商事の子会社ですから、三菱商事系のポンタと相性がよかったわけです
。本丸である住友商事、三菱商事は大きな会社ですが、その子飼いの武将であるクスリのカツマタ、ポンタカードは小さい勢力なため手を結んでいるのです。ポイントも戦国時代、ドラッグストアも戦国時代だからです。勝者が決まったら、おそらく提携が解消されると思われます。
日用品業界も戦国時代
日用品業界も戦国時代です。外資系のP&Gやユニリーバ、ロレアルなどが日本に攻めてきています。そのため、販促費をかけて、商品を知ってもらおうと鎬(しのぎ)を削っています。
日用品がいろんなところで特売があるのは、同業他社との戦いに勝つためためです。
ちなみに、今回の「めぐリズム」という商品はアイマスクで競合している会社がほぼありません。つまり、この日用品業界の戦国時代とは様相が異なるわけですが、販促費が投入されているのは中国人観光客の影響です。実は「めぐリズム」は、中国人観光客がたくさん購入していた商品の一つです。
外国人観光客がターゲットなので、販促費をポイントでもらっても意味はないですよね。
トモズグループの戦い
クスリのカツマタは15%オフクーポンを定期的に配布するのが基本戦略のようです。それとは別に。ポンタポイントを利用すると最大15%オフのようなキャンペーンもあります。
いろんなクーポンサービスで15%オフクーポンが配布されているようです。私が最初に誘導されたメルペイでのキャンペーンもその一貫なのでしょう。
リピート顧客をたくさん抱えている大手ドラッグストアであれば、ポイントで15%還元としたほうが売上も上がり、次回への導線にもなるわけですが、そうしていないのには理由があるわけです。
ドラッグストア業界は、再編も進みそうで、いろいろと面白いので、この連載でもまた取り上げたいと思います。