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お金マンダラ
【第21回】アマゾンで終了になるサービス。その理由は?

ビジネス書作家で商品開発コンサルタントをしている美崎栄一郎です。キャッシュレスについての本を書いたご縁で、すごいカードで、連載「お金マンダラ」を始めることになりました。

この連載では、お金にまつわる話を色々と話題にしたいと思います。物事の仕組みを探求するのが好きで、歴史好きでもありますので、話がやや脱線気味になるのはご了承ください。

アマゾンで終了になるサービス

アマゾンパントリーというサービスが終了になりました。

アマゾンパントリーとは、単品で送ると商品代金より送料がかかってしまうような商品(トイレットペーパーや洗剤などの嵩ばる日用品や単価の安いお菓子など)を一箱にまとめて送るというサービスです。
スーパーやドラッグストアの近くに住んでいたときには、利用する機会がなかったので、サービス終了の前に一度は使っておこうと思いました。

単に批評するのではなく、実体験をした上で、語りたいんです。

同時に、最近増えているアマゾン定期便というサービスも試してみました。
両者を使ってみると、アマゾンで終了になるサービスと新サービスの違いが見えてきました。今回の連載はそんな話題をお送りします。

アマゾンパントリー

まず、2021年8月24日に終了したアマゾンパントリーです。1箱390円の手数料(送料込み)で巨大な箱に入って送られてきました。どのくらい巨大かと言いますと、横幅が玄関くらいのサイズです。箱の大きさに、びっくりしました。

買い物の仕方としては、パントリーというアマゾン内のカテゴリーの商品だけをセレクトしてカートに入れていきます。

積載率は100%を超えると2箱になるので、手数料が2箱分になってしまいます。ですので、商品ごとに設定されている体積を計算しながら、1箱に収まるように買い物をしました。体積の計算はアマゾンのカートに入れると、自動計算されるので楽ちんです。

やってみると、パズルゲームのようで面白い。

トイレットペーパーとかカップラーメンとか嵩ばるものを最初にどんどん入れていきます。最後の調整で、チーズかまぼことかハッピーターンのようなお菓子を入れて100%に。

商品を供給するメーカー側でも販促費を出しているようで、割引されているお買い得商品もありました。アマゾンで定期的に開催されるキャンペーンと同じ仕組みですね。

私の場合は、欲しいモノを積み上げて(最後の方は、ちょっとだけ欲しい程度のものですが)、商品代金が5,977円。それに手数料390円が付与されて、キャンペーン商品の割引があって、合計6,217円の買い物でした。

積載率100%でも50%でも送料390円は同じです。私は一番大きな箱を見たかったので、100%にしたのですが、50%であれば、半分くらいのサイズの箱で送られてくるようです。

パントリーの仕組みで重要なのは、積載率です。
配送を効率化する意図があり、それに各メーカーが相乗りしている形式です。

私は、花王の商品、めぐりズムを1箱買いました。嵩ばる商品なので、普通に送ると送料と商品代金が同じくらいになるはずですが、相乗りする形であれば、送料が安くなり、無駄がありません。消費者としても、同じ商品ばかりを買うのではなく、欲しいモノを合わせて買えるので、無駄な在庫を抱えなくて済むので助かります。

提供するメーカーも購入する消費者にも両者にメリットがあるので、アマゾンパントリーのサービスは、日本だけではなく世界9ヶ国のアマゾンで利用することができました。

ただ、この一時代を築いたサービスも終焉を迎えることになりました。

アメリカを皮切りに日本でもサービス終了です。輸送コストの効率化の観点で始めたサービスですが、廃止となりました。

アマゾン定期便

これに変わる輸送コストの最適化サービスは、アマゾンにとってもメリットのある定期便を始めています。

アマゾンの定期便はアマゾンで商品(消耗品)を買うときに、値段の横に定期便という札がさりげなくついています。普通に1個買うか、リピート買い(定期便)にするのかを選ぶという方式です。

定期便では、注文するときに、次の購入まで予約する仕組みでアマゾンにとって失注がなくなります。

メーカーにとっても商品のリピーターが獲得できて嬉しい。購入頻度は2週間から6ヶ月と自由に選べますが、リピート買いするという約束をするだけで即座に10%引きです。さらに、3個以上の商品を同時発送でまとめると15%引きで、送料も無料です。

パントリーの仕組みは、定期便に置き換わったわけです。

定期便だけが残った理由

定期便は残るけれど、パントリーを終了する理由は、輸送コストではなくマーケティングコストに注目しているからでしょう。

パントリーは1回の買い物で、箱を満載にするため、ついで買いは増えるでしょうが1回限りです。
対して、定期便は購入時にリピート買いするならば、割引するという特典をつけて、1回限りの買い物で終わらないように次の買い物の約束まで取り付けるという仕組みです。

3種類以上の商品を同時の便として買うと15%オフという輸送コストの圧縮による還元もありますが、1個だけ買ってもリピートを約束すれば即座に10%オフという売り方が新しい。

実は、この売り方は実店舗だと難しく、通販ならではと言えます。

アマゾンのような通販であれば、お客の意志や来店パターンと関係なく、次の配送を意志決定すれば良いだけなのでできる販売方法なのです。

この動きを見ていると、アマゾンの戦略は、配送の効率化という段階は終わり、リピートの促進ということで、マーケティングコストの最適化と競合の通販の駆逐という段階に入っていることがわかります。
通販でモノを買うのが当たり前になりましたが、アマゾンはさらに先を目指しているようです。

PROFILE

美崎栄一郎 (みさきえいいちろう)

ビジネス書著者、講演家、商品開発コンサルタント。
1971年横浜生まれ、大阪育ち。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、花王株式会社で約15年勤務。2011年に独立し、現在に至る。
花王時代から社会人向けに勉強会・交流会を主催、著書を執筆。
これまでの著書は『iPadバカ』『キャッシュレス生活、1年やってみた 結局、どうするのが一番いいんですか?』など40冊以上。