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「笑顔は最高のコミュニケーション」プロクラウン望月美由紀さんの夢とお金

「笑顔は最高のコミュニケーション」プロクラウン望月美由紀さんの夢とお金

他の人と違う生き方をしている人、夢を追い続けている人…。社会の中に色々な生き方を選択する人が増えた。

そんな人たちは、どのように生計を立てているのか。お金をどのように考えているのだろうか。

他人のお金の価値観、向き合い方について探る連載企画 「おかね」と「わたし」。

今回は、プロクラウンとして活動する望月美由紀さんにWEB取材を行った。

最近では、つくり笑顔アドバイザーとして講演にも登壇されている望月さん。

プロクラウンになるまでの経緯や、プロクラウンの生活の様子はどのようなものか?またパフォーマンスだけでなく、講演にも力を入れるようになった理由は何か?

「夢」と「お金」の関係や「お金」の価値観を中心にお話を伺った。

「クラウンもっちぃの時だけ本来の自分をさらけ出せた」

-まずはプロクラウンとして活動内容をお聞きしてもよろしいでしょうか?

プロクラウンとしての主な活動は、幼稚園やショッピングモールで行うイベントでのパフォーマンスです。

最近は活動の割合を減らしていて、全体の活動の約3割がプロクラウンの活動になります。残りの7割は講演への登壇やこのような取材を受けたりしています。

講演では、「つくり笑顔アドバイザー」としてコミュニケーション方法を伝えたり、「うつ病家族アドバイザー」として、うつ病との向き合い方を話しています。

どちらにしても、「笑顔で元気に生活してほしい」という思いを大切にして、活動をしています。

-プロクラウンになろうと考えたきっかけは何ですか?

クラウンとの出会いは、中学3年生の時でした。

通学路でたまたま大道芸を見て、言葉を使わず身体1つで誰かを楽しませる、そんな姿に惹かれて「やってみたい!」と思いました。

静岡市では年に1回「大道芸ワールドカップ」というイベントがあって、そこで活動する市民クラウンという役割がありました。受験も終えて、高校2年生の時に市民クラウンの募集を発見して、申し込んだことがきっかけです。

市民クラウンとして活動をしてみると、思った通り楽しくて、年に1回の活動ではすぐ物足りなくなりました。

「もっとクラウンを勉強したい」と思い始めると、居ても立っても居られなくなって、上京して本気でクラウンになろうと決意しました。

-なぜそこまで本気でクラウンを習得しようと思ったのですか?

クラウンとして活動している時が、何よりも楽しかったからです。

私は小さい頃から目立ちたがり屋で、面白いことが大好きでした。小学生の頃には独学で落語を勉強して、親戚の前で披露したこともあったくらいです。

しかし、私が大きくなるにつれて、長女である責任感・初孫として親戚からの期待感を感じ始めてしまいました。

この期待感が私にとっては重いプレッシャーで、いつの間にか期待される「望月美由紀」を演じるようになってしまったんです。

本来の自分を隠すようになり、そして期待される姿と自分を比較するようになり、自分自身にも自信がなくなっていきました。

そんな私がクラウンをしている時だけは、別人格として本来の自分をさらけ出せる。さらけ出した自分を見たお客さんたちが、笑顔になっていく。

本来の自分をさらけ出せる喜び、そしてお客さんを笑顔にできたという満足感が幸せでした。

市民クラウン時代の望月さん
(市民クラウン時代の望月さん)

「親は頼りたくない」自分のお金でやり遂げる決意

― プロクラウンになると決意されてから、生活はどのようになりましたか?

上京はお金がかかるので、まずはアルバイトをしてお金を貯めました。

プロクラウンとして成功できなかった時を考えて、お金を稼ぐ手段になると思い、医療事務系資格の取得もしました。

成功できなかった時でも親を頼らずに、絶対に自活していくと決めていたからです。

自分に自信がなかったので、親にお金を出してもらい面倒を見てもらうのは申し訳ない気持ちがあったのだと思います。

それに自分のお金ならば自己責任なので、変な期待感やプレッシャーを感じずに済みますから。

ただ上京してから気づきましたが、夢を追いながら自活することは甘くなかったです。まずクラウン学校の受講費用だけで年間50万円~60万円かかりました。

そこに一人暮らしになるので、食費・生活費・家賃、それにクラウン学校までの交通費も高かったです。

だから朝から昼間は稽古を受け、夜中や稽古が無い日はひたすらアルバイトをし続けました。クラウン学校での修行以外にも、他の先生にクラウンを学んだりしていたので、寝る時間はほとんどなかったですね。

正直かなり苦しかったです。

― 複数の先生に教わっていたのはなぜですか?

クラウンといっても人によって表現方法が様々に存在するからです。

クラウン学校の先生は元々タップダンサーだったので、クラウンの表現でもダンスのメソッドを取り入れていました。それに対して、もう一人の先生は元々演劇を行っていたので、表現での発声方法も演劇のメソッドが組み込まれていました。

クラウンは何かの役になりきるのではなく、あくまで一個人の個性を大げさに表現することによって、人を楽しませるものです。だから演じる人によって異なるクラウンができあがる。せっかくなら色々な表現方法を習得したほうが楽しいですよね。

他にも身体を用いたパフォーマンス繋がりで、パントマイムなどを教わることもありました。

クラウン養成講座時代の望月さん
(クラウン養成講座時代の望月さん)

「私はやりたいクラウンをやる」プロとして生活する厳しさ

―プロクラウンとして活動していく中で心がけていたことはありますか?

「自分がやりたいキャラクターを演じること」と「自分を安売りしないこと」を大切にしています。

プロクラウンとして悩むのが、需要と供給、お客さんに求められるキャラクターと演じたいキャラクターの違いだと思います。先ほどのお話ししましたが、クラウンは本来の自分を大げさに表現して、お客さんを楽しませます。

だからクラウンには、演じる人それぞれの個性が強くキャラクターに出ます。

しかし需要のある仕事は、ジャグリングや風船で犬を作って子供に配ったりするようなキャラクターです

全員がいわゆる“クラウン”をやりたいわけではない。でもこのキャラクターをやらないと仕事を獲得することが難しい。

この苦悩に悩むプロクラウンの方は多いと思います。

唯一の正解はありませんが、私は自分が演じたいクラウンを演じるように心がけています。

そして講演や執筆など、クラウン以外のお仕事も行って、生活しています。本来の自分を表現したいという気持ちでクラウンを始めたので、その気持ちは忘れないようにしています。

「自分を安売りしないこと」は、クラウン市場全体で大切なことです。

ここ10年くらいで景気も悪くなったため、地域でのイベントも少なくなってきました。クラウンの仕事はイベントと一緒に求められることが多いので、クラウンの仕事も少なくなっています。

クラウンは地方で1日3万、都内だと1日5万円ぐらいの報酬になることが一般的です。

市場全体が縮小している現状だと、この金額ではクラウンだけで生きていくのは厳しいです。

そんな中で、仕事欲しさに自分を安売りしてしまうクラウンが出てしまうと、市場全体でのクラウンの価値が下がってしまう。

こうなると、クラウンの演者たちが自分自身で首を絞めてしまうことになります。

だから、私は自分を安売りしません。その代わりプロとして仕事は値段に関係なく、丁寧に全うすることを心がけています。安いから手を抜こうなど考えている人をみると、引っ叩きたくなりますね(笑)

「日常的にお客さんを笑顔にしたい」

―最近ではクラウン以外の活動をなさっていますが、きっかけはなんですか?

講演を始めたきっかけは2011年に参加したスピーチコンテストですね。

人前で話をしたときに、喋りでも自分を表現できると気づきました。メイクをしてクラウンもっちぃにならなくても、自分を表現できると。

今では講演の方がやりがいを感じ始めています。

クラウンも講演も観客を笑顔にする、相手の気持ちを変える点では一緒です。ただクラウンと違い、講演は日常の中で行うことができます。

やっぱりクラウンは非日常の世界。お客さんを笑顔にできるのは、その時一瞬だけで、日常を変えることはできないです。

でも「日常的に笑顔を継続する上で意識してほしいこと」を講演で話せば、講演から帰った後もお客さんは笑顔になれる。

その時一瞬ではなく、お客さんが継続的に笑顔になるお手伝いができることに、魅力を感じています。

「貪欲に学び続けます」望月さんのお金の価値観

―お金はどんな時に使うことが多いですか?

ミュージカルや先輩のパフォーマンスを見に行くときや、海外旅行には惜しまずお金を使います。

昔は学べなかった表現方法も今では日本で数多く見ることができるので、ミュージカルや先輩のパフォーマンスを見ることは、貴重な学びになります。

海外に行くことも色々な考え方、価値観を体験できるので、表現の幅が広がります。

やっぱり、貪欲に学び続けるためのお金は一切惜しまないですね。

「笑顔は最高のコミュニケーションツール」

―今後はどのような活動を行っていきますか?

講演活動を中心に、笑顔は最高のコミュニケーションツールということを広めていきたいです。

みんなが細かい気遣いや表現の仕方を意識して、日常を過ごしていけば、周囲の人も笑顔になる。

笑顔の輪がどんどん広がっていく社会を目指して活動していきたいです。