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お金とわたし
「キャッシュレス事業もSF的な柔軟な発想がないといけない」消費生活評論家・岩田昭男さんが語るキャッシュレスの未来

消費生活評論家・岩田昭男

様々な職業の人へのインタビューを通じて、お金の価値観や向き合い方を探る連載企画 『お金とわたし』。

今回お話しを伺ったのは、クレジットカードや電子マネーに関する数多くの著書を発表し、業界のオピニオンリーダーとして30年間活躍し続けている岩田昭男さん。

岩田さんにクレジットカードやキャッシュレス事業の展望について伺いました。

キャッシュレス還元事業から、意識が変わりつつある

消費生活評論家・岩田昭男

–岩田さんがクレジットカードに興味を持ち始めたきっかけを教えてください。

岩田昭男さん(以下敬称略):90年代初めは、日本では意外とクレジットカードが流行っていなくてね。たまたまクレジットカードの使い方みたいな本を書いて、それが横浜の本屋で売れてね。
それがきっかけで色々と本を出版するようになったんだよ。

元々、クレジットカードは面白いと思っていたのだけど、傾倒するきっかけになったのは当時クレジット先進国だったアメリカに行ったことだね。
だって、クレジットカードを持てる人と持てない人の分岐点を不思議に思わない?

「与信」をどうやって判定するのか、ということが個人的に面白くて、当時のクレジットカード先進国だったアメリカに行ったんだよ。 アメリカも日本のようにポイント還元サービスが流行りかと思ったら、還元率なんて誰も言っていなかった。

むしろ「FICOスコア」というクレジットカードの信用スコアが一番重要で、信用スコアで預金金利などあらゆることが動いていた。日本と全然違うと思ったね。
どうやって点数をつけるのか、とか、信用スコアが社会に影響を及ぼすことで生まれる信用格差社会が将来の日本を見るようで、非常に興味深くて、クレジットカードは幅が広いツールになるなと思ったね。

–この業界に30年いられて世間のクレジットカードに対する意識の変化はありましたか?

岩田:これまでは意識の変化を感じることがなかったけど、昨年10月から始まったキャッシュレス還元事業からは、意識が大きく変わりつつあるね。
僕は30年間全国の消費生活センターで毎月のように講演して回っているけど、カードは借金だからダメという見方がずっとありますよね。
特に地方の消費生活センターに来る人はほとんど高齢者で「カードは借金だから良くないもの」みたいに思っている。

その意識がずっと変わらないなと思っていました。 それがキャッシュレス還元事業が始まって、若い人を中心に「キャッシュレスは便利」に大きく変わった。
でも、年寄りはまだ借金だと言う感覚が強いし、スマホの壁も高くて敬遠してしまうんです。そこが今後の課題かなと思っている。

岩田さん自身はSuicaを愛用している。その理由は…

–これまでにたくさんの著作を出版されていますが、気に入っている本はありますか?

岩田: 「Suica一人勝ちのすすめ」だね。

Suicaがどんどんメジャーになったから面白くなって、appleがSuicaを選んだ理由というのが一番楽しかった。
SuicaはFeliCa(非接触ICカード技術方式)で日本独自の規格だったからダメだと言われていた。そのSuicaが国際標準の最たるもののアップルに突然採用されたのでびっくりしたよね。

なぜかというと、日本のマスコミとか評論家とか、銀行関係者は、Suicaのように「今までなかったもの」には出てきてほしくない人たちが多い。
だから、FeliCaは日本独自の規格でガラパゴスだとうるさく言われるんです。

–岩田さん自身もSuicaを使っているのですか?

岩田:最初に出てから20年間使っているよ。それに「ビュー・ スイカカード」と言うクレジットカードを紐付けてSuicaにチャージしていろんな物を買っているよ。
僕はずっとSuicaの本も書いてきたし、ビューカードの本も書いているんですよ。

–先日キャッシュレス協会の会長にインタビューしたんですが、その会長もキャッシュレスサービスで1番いいのはSuicaだとおっしゃっていました。Suicaの魅力はなんですか?

岩田: 電車に乗る時にも早いし、買い物も早い。
0.2秒だから早いよ。

–岩田さんはQRコードよりもSuicaのようなFeliCaの方が良いと考えられている?

岩田: FeliCaの方がセキュリティ的には良いけれど、店側のコストが高いからね。そこが問題かな。
QRはコストが安いのがいい。ああいうシンプルなものは、、何かの始まりだからね。
Suicaは交通系のツールだけど、QRは、通信系通信系の人たちが自分たちのメディアを持ったと考えると分かりやすいでしょう。

SF的な発想がないといけないと思う

消費生活評論家・岩田昭男さん

–諸外国と比べて日本はキャッシュレス化があまり進んでいないと思うのですが。

岩田:日本人の意識が、クレジットカードは借金だからだよね。
次はやっぱり、SF的な発想がないといけないと思う。

ドラえもんの秘密道具みたいな発想を参考に、開発者は新しいものを作って欲しい。5G時代になるとますますこの辺の能力が求められるよね。

最近だとNetflixの『ブラック・ミラー』という作品の中の「ランク社会」というエピソードでは、信用スコアや監視社会の非常にリアルな話があって、キャッシュレス時代を知るのに便利。
そういうところから今後の買い物がどうなるのか、どうするのか、考えればいいと思います。

–本当のクレジットカードはどういう存在だと思われますか?

岩田:ただの後払いだね。
クレジットカードは借金だと思われていて、日本人は人に借りを作るのが嫌だから抵抗があると。
利用代金を1ヶ月から2カ月間立て替えているだけで利子も付かないのだから、私は借金じゃないと思うけど、この辺の考え方を変えていかないとキャッシュレスはなかなか根付かないよ。

–今おすすめのクレジットカードを、学生向け、お得、総合力で3つ教えてください。

岩田:学生向けはやっぱりオリコ(Orico Card THE POINT)かな。年会費無料でしょ。

オリコ the point 年会費

ボタン

オリコ the point ポイント

ポイント還元率もいいし、お得なのは楽天カードかな。楽天市場で買い物をする人なんかはとくにお得だよね。

楽天 キャプチャ

楽天の年会費とポイント還元率

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楽天カード ポイント

総合力は、JCB W。
年会費、還元率、保険の内容も考えると総合的には優れている。

JCBw キャプチャ

ボタン

JCBw ポイント

今後は社会課題解決型、SDGSになってくる

–10月から始まったキャッシュレス・ポイント還元事業についてはどう思われますか?また、今後のキャッシュレスはどうなっていくのでしょうか?

岩田:キャッシュレスがなんとか日が当たったという感じがするから、良かったと思いますよ。
今後はコロナウィルスが突然出てきて、消費生活全体がダメージを受ける。さらにキャッシュレスにも逆風だが、一応キャッシュレスのレールが敷かれた後だったから、基本的なところは守られるとは思うけど、現金への回帰や消費の萎縮が進むのが怖いところ。
キャッシュレスの状況を見ると、PayPayの独走で、通信系が飛び出した印象が強い。流通系は少々落ちたけど、交通系も今後は大きく伸びそうだ。

–交通系ですか。

岩田:力を入れている理由が大事だと思う。

トヨタのMaaSアプリ、あれは今は音無しだけどいずれ大化けする。

Suicaというのは残念ながら東京中心の鉄道の交通系だけど、地方は車が中心。車社会の地方にリーチしていかないとだめだよね。
トヨタならそれができるから期待できる。ただし内部でガタガタしてて動きが鈍いのが残念だね。もったいないところだ。

–今後のキャッシュレス事業はどのようなものが出ると思いますか?

岩田:クレジットカードは様々な種類が出ているけど、基本的に、VISA、Masterブランドが強くてそのルールで動いているから日本中右へならえのものが多い。もっと変わったものがたくさん出ると面白いのに。その意味ではQRは面白かったけど。

岩田:もう一つは発行の理念で単なる金融会社のものではなく、社会課題解決型のSDGsになってくると思うよ

(編集部注:※SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称)

つまり、資金移動の金利ざやをとって儲かればいいという事業ではなくなる。
一番ダメなのはスタートアップ企業の社長とかだね。立ち上げた企業を売ったり買ったり、そういうので頭がいっぱいだから、ああいう人たちは分かってない。 その辺がシリコンバレーと違う。

–シリコンバレーとは違いますか?

岩田:彼ら(一般的なスタートアップ企業の社長)はただのマネーゲームになっているじゃない。
シリコンバレーもほとんどはそんな人たちだけど、中にはかつてのスティーブ•ジョブスやPayPalマフィアのように「もっと簡単にしたい」「もっとなんとかしたい」という根本の思いを打ち出してやっている人がいる。
日本のスタートアップの場合、儲かるからやる。それだけじゃダメだと思うけどね。

あと、もう1つは信用スコアは分かりやすいからみんな熱中してやっているけど、あんまりおすすめしない。

–手軽すぎるということですか?

岩田:要するに個人情報だから、活用とか言っているけど、こちらとすると強引に社会でランキングされるのだからとんでもない話だ。自分にはもっと隠れた力があるのにそれを評価されないと思ってしまう。
それとマイナンバーカードがこれから一緒になってくる。個人情報と購買履歴を合わせて各個人のニーズの情報を流すとか、そうしたことは別にやってくれなくてもいいよね。
これが情報銀行などで日本政府の声掛けでどんどん整備されつつあるから気をつけたいところだ。ヨーロッパで始まったGDPR (一般データ保護規則)のような個人情報の規制をちゃんと法律で決めてからじゃないと不安だね。

(編集部注:GDPRとは、 EUで2018年5月から施行された「General Data Protection Regulation」の略。日本語訳は「一般データ保護規則」。)

–個人情報保護法では全然足りないということですか?

岩田:もっと厳しいものが必要ですよ。
個人情報を使う時にその人に必ず同意を得て使いなさいという法律、それがGDPRだ。利用する方もいちいち連絡が来るから面倒だけどね。これはある程度我慢しないとダメだ。
そうじゃないと、個人情報は高値で売れるから一部の大企業の好き勝手に使われるよ。彼らはゴールドラッシュが来たと言って目の色を変えているからね。

現金からキャッシュレスになることでお金の概念が変わる

消費生活評論家・岩田昭男さんが語るキャッシュレスの未来

–最後に、今後お金はどうなっていくと思いますか?

岩田:現金からキャッシュレスになるとお金の概念も変わるし、お金持ちになる人種も変わるんじゃないかな。

今のお金持ちは、1枚1枚一万円札を数えるみたいな、ものすごいお金に対する執着が強く具体的だ。これまでは、そういうタイプな人がお金持ちになっていた。 しかし、キャッシュレスになると、現金という現物は消えるでしょ? デジタルの1と0が並んでいて、押せば終わりという時代には、これまでとはお金という存在が変化すると思う。サブスクリプションなどで既に変化が見られるが、お金の支払いに関する価値観が変わってくるだろう。

言い換えるなら、お金持ちになれる人が変わるかもしれない。

1円玉を数えて乗せていくみたいな、そういう感覚がキャッシュレスだとなくなるでしょ。 そうすると、これまであった根性論がいらなくなるから、体育会系で走ってきた日本型経済はマズいだろうね。 東京オリンピックみたいなものはもう終わりじゃない? 古いお金の概念を持った人たちが支配しているから、日本は伸びない。

そう考えると、お金の話は面白いんだよね。

岩田昭男
消費生活ジャーナリストとして、約30年に渡りクレジットカードや電子マネーなどの金融、流通分野を取材する業界のオピニオンリーダー。
著書に『電子マネー戦争Suica一人勝ちの秘密―魔法のカードの開発秘話と成功の軌跡』(中経出版・現カドカワ)、『クレジットカード・サバイバル戦争』(ダイヤモンド社)など多数。

公式サイト:岩田昭男の上級カード道場